コラム

『ガラスの仮面』に学ぶマーケティング

『ガラスの仮面』に学ぶマーケターのヒント①「感覚の再現」篇

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『ガラスの仮面』にヒントをもらう、会社のデスクの下に全巻を配置!

はじめまして。ライオンでマーケティングの仕事をしている渡瀬です。この連載では、少女漫画『ガラスの仮面』から学ぶマーケティングについて、全6回で紹介していきます。よろしくお願いいたします。

さて、皆さんは『ガラスの仮面』をご存知でしょうか? 北島マヤと姫川亜弓という2人の演劇少女が伝説の舞台『紅天女』(くれないてんにょ)の主人公役を追い求め成長する様を描き、1976年(昭和51年)から漫画家の美内すずえ氏が『花とゆめ』で連載を開始、単行本は現在49巻まで刊行されている未完の伝説の少女漫画です。

私が初めて『ガラスの仮面』を手に取ったのは、確か舞台役者を夢見ていた10代の頃。その後、劇団四季に入団しミュージカルダンサーになった私にとって、『ガラスの仮面』は、演じるとは何か、役づくりはどうあるべきかなど、役者としての心得を学ぶバイブルとなりました。

そして舞台を離れ、マーケティングと呼ばれる業界に従事するようになってからも、私の『ガラスの仮面』に対する愛は深まるばかり。会社のデスクの下に全巻を配置し、休み時間にこっそり読んでいます。
何回読み返しても、毎回感動し、新たな発見があるのが『ガラスの仮面』。プレゼンやピッチで悩んでいる時、失恋時、恋愛時、そんな私の人生の局面において、私は『ガラスの仮面』に救われ、様々なアドバイスをもらっています。
この連載では、そんな『ガラスの仮面』の中から、私がマーケティングという仕事をする上で「これは役立つ」と思ったヒントを紹介していきたいと思います。

ちなみに、この連載では私が主観的に『ガラスの仮面』から学んだヒントをお伝えしていきたいと思っています。『ガラスの仮面』の内容について深く解説し、言及するわけではないので、物語を読んだことのない方にとってはわかりづらい点もあるかもしれませんが、お許しください。

記念すべき第1回目に私が紹介したい『ガラスの仮面』から学ぶマーケティングのヒントは、“感覚の再現”です。

この言葉を聞いて、『ふたりの王女』を思い出した方。あなたは、かなりのファンです。ぜひ、お友だちになりましょう。さらに、「なんてきれいなバラ…!」と思わずつぶやいてしまったあなたは…かなりのマニアとお見受けします(一緒に横浜の山下公園に行って、『椿姫』のチケットを追って海に飛び込むマヤごっこをしましょう)。

さて、“感覚の再現”に話を戻しましょう。
『ガラスの仮面』は、北島マヤと姫川亜弓という2人の少女、いや女優が切磋琢磨し、技を競い合いながら成長していくストーリーなのですが、その中でこの2人が初めて本格的に共演する劇中劇が『ふたりの王女』です。

『ふたりの王女』の中でマヤは、誰からも愛される優雅で美しい姫アルディスを演じることになります。見た目も平凡、子どもの頃から苦労して暮らしてきたマヤは、アルディスをどう演じればよいのか分からない。そんな悩む彼女は、いつも彼女を匿名で応援する通称「紫のバラの人」のはからいで、かつてオペラ版『ふたりの王女』でアルディスを演じた歌手・北白川藤子と面会することになります。

その北白川がマヤに教える演技法が“感覚の再現”なのです。

出典:白泉社『ガラスの仮面』第15巻

全く同じ体験をしたことがある人はいない。でも違う体験からでも同じ気持ちを経験したことはあるはず。その気持ち、つまり“感覚”を再現すれば、観客はそこに本物を見出すことができる。そしてそれこそが、お芝居をするということなのだと。

私は、これはマーケティングにも当てはまることだと思っています。マーケティングは、ターゲットのインサイトを理解することから始まります。そして、その理解のためにユーザー調査を行い、ターゲットの声を集めようとします。でも調査をするだけで本当に彼らを理解できるのでしょうか? 彼らが発した言葉だけを聞くだけで十分なのでしょうか? 彼らがなぜその言葉を選び、それを発したのかまで理解できるでしょうか?

私は彼らの言葉の奥にこそ、真のインサイトが隠れていると考えています。それを理解するためには、私たちはそのターゲットになりきる必要があり、その時に役立つのが“感覚の再現”なのです。

次ページ 「王女アルディスを演じきったマヤに「感覚の再現」を学ぶ」へ続く

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