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消費者とリアルな接点を持てる交通広告・OOHは、「移動空間」や「景観の一部」という従来の概念を飛び越え、人や人、人と地域のコミュニケーションの場を生み出していく可能性があります。
本コラムでは、「Metro Ad Creative Award」の審査員らが登場。交通・OOH広告を広く、街の魅力を創造するメディアとして捉え、最前線で活躍するクリエイターたちが自身を刺激する都市におけるクリエイティブについて語ります。
今回はプランニング部門審査員の木村健太郎氏によるコラムの第2弾です。
強くて効果的なアウトドア広告の作り方(2)
は、アウトドア広告の強みであるレレバンシーと、トキメキの瞬間を発想するための4つの方法論をお話ししました。いいアウトドア広告の条件とはブランドとスペースのレレバンシーが高いということです。しかし、実はもうひとつ、いいアウトドア広告を作るために大切な条件があると思っています。それは、「空間のバリューアップ」です。
アウトドア広告が掲出される場所は、たいてい公共の空間です。それが交通機関の構内や車内であっても、街の道路や広場であっても、多くの人が使うみんなの生活環境なわけです。広告であることに気づかせずにさりげなくアプローチするアウトドア広告のことを「アンビエント広告」と言いますが、アンビエントとは「環境」という意味なのです。
美しい景色の写真に広告看板が写り込んじゃったら頭にきますよね。美しい街並みに派手なラッピングバスが走っていたらなんだか残念な気持ちになりますよね。こういうことを阻止するために、ブラジルのサンパウロ市では、街の美観を損ねない目的で、アウトドア広告を厳しく禁止する条例が施行されています。
日本にはそのような厳しい規制はありませんが、商品やサービスのプロモーションのために、街の景観を少しでも悪くしてしまったり、利用する人にちょっとでも不快な思いや余計な負担をさせてしまったりしたら、実はその広告はブランドにとってマイナスになりうるのです。これは無意識的な影響なので、広告する側にとってはついつい見過ごしがちなポイントなんですが、いくら関心や欲求が高まるトキメキの瞬間を捉えたとしても、その広告のせいで空間の価値をダウンさせてしまったら、そのブランドに嫌悪感を覚えてしまうことがあるのです。