告白…「私は、間違ったブランド施策をご機嫌でやりつづけていました」

「実務者ブランド方法論」における、正しいブランド広告とは?

そうであるならば、「実務者ブランド方法論におけるブランド広告」とはどのようなものなのでしょうか。まず、ブランド方法論のバイブルである「ブランド界の階級」を復習してみましょう。

■ブランド界の階級 5つのレベル

① 約束・絆・大好きレベル(絶対選択してもらえる・スーパースターブランド)
② なんとなく好きレベル(選択時に有利・優秀なブランド)
③ 嫌いではないレベル(選択肢には入る・凡人のブランド)
④ 知っているレベル(知らないよりはまし・赤ちゃんブランド)
⑤ 知らないレベル(この状態では妄想がない=ブランドではない)

■ブランド階層図

実は、世の中のブランド広告が間違えてしまった理由は、不可能な「約束」をつくろうとしたことだけではありません。

ブランド階級のレベルを、雑にたった2つに分けてしまって、肝心なところが見えていないからです。ブランドづくりにおいては、常にこの5つの階層レベルをしっかりと意識しなければいけません。

そもそも、世の中のブランド広告のターゲットは、誰だったのでしょうか?

おそらく、その商品を購入する可能性のあるすべての人になるのではないでしょうか?
でも、すべての人だと、そもそも商品の存在を知らない人も含まれますし、商品名しか知らない人も含まれます。商品の存在を知らない人と商品の間に、『約束』をつくることなどできません。順を追って考えたらわかるはずなのですが、ブランド階級のレベルを2つに分けていては、このことに気付けないのです。

もう少し掘り下げます。あなたがブランドづくりをしようとしている商品のターゲットが仮に1万人いるとします。その人たちは、5つのレベルに各々どのくらいの人がいると思いますか?多くの場合、ざっくりいうとこんな比率です。

■階級別のターゲットの人数(仮)

1万人の中で、9000人は、あなたの商品の存在を知りません。
900人は、商品名をなんとなく知っているだけです。
90人が商品について、嫌いではないと思っています。
9人が、商品をなんとなく好きだと思っています。
そして1万人の中で、たった1人ですが、あなたの商品を超好きな人がいます。

百歩ゆずって、世の中の『約束』をつくるためのブランド広告に意味があるとしたら、その効果が期待できるのは、せいぜい(今のブランドレベルが)レベル3「商品嫌いではない」以上のたった100人だけではないでしょうか。

マスメディアは、超高価なメディアです。数多くの生活者にメッセージを届けることができるテレビ広告なのに、1万人中の100人、1%が広告対象というのは、どう考えても、もったいなさすぎます!

ブランドづくりの本来の目的は、お金を儲けるためです。

ですから、ブランド広告の目的は、広告によって生活者の頭の中に『お金を儲けることにつながる「ブランド(妄想)」をつくる』ことなのです。ブランドづくりでは、『知ってもらうこと。そして嫌いではないイメージ(妄想)をもってもらうこと』も非常に重要です。知っている人が増えることも、嫌いでない人が増えることも、儲かることに貢献します。

※詳細は「『実務者ブランド論』でブランドづくりをスタートしよう!」を参照ください。

あなたの商品の存在を知らない人に知ってもらうこと、ネガティブではないイメージをもってもらうこという目的を達成するためにマス広告という手法は適しています。ですが、儲かるということを考えれば、レベル1(知らない)をレベル2(知っている)に引き上げることの方が重要なのではないでしょうか?少なくとも、ブランド広告をやるときに、約束をつくることと、知ってもらうことを比較して、どちらが正解かを考えるべきなのです。

今日もまた、テレビでは、企業が儲かるために必要な人材を募集するためのリクルート目的の企業ブランド広告が放送されています。でも、そんなブランド広告の多くが決まって「人と地球が大好きで未来にチャレンジする」ことを美しくイメージ訴求している。

きれいですが何も残りません。知らない企業が、あたりさわりのないことを広告表現しているだけです。学生さんに「今の広告はどこの会社だったかわかりますか?」と聞くと、「覚えていない」「どこか知らない会社」と答えます。それでブランド広告になるのでしょうか?

社名の認知度が低い企業における、リクルート目的のブランド広告は社名連呼などの社名認知を優先することが最優先であるべきです。もちろん例外はありますが、少なくとも『まず社名を知ってもらうこと』と『学生と約束をつくること』のどちらが、目的を達成するため効果的なのかを、企画の段階できちんと比較検討することは大事だと考えます。

自らの失敗を振り返ってみると、実はブランド広告をつくる実務者と、広告を判断する経営者は、このブランドレベルではレベル4(なんとなく好き)かレベル5(約束)なのです。その企業や商品がなんとなく好きな人、ごく限られた上位の10人の存在です。特殊な限られた人達が、気づかないまま、自分たちにとって気持ちいい広告を自己満足でつくってしまうのです。昔機嫌よくやっていた本人が懺悔の思いをこめて白状するのですから、多分正解なのだと思いますがどうでしょうか。

このようなことにならないためには、目的と定義をはっきりさせて、ブランドの界の階級を認識した上で、ブランドづくりを、土台の部分からすすめていくことが必要となります。

そして、ブランドの基礎。土台となる部分をつくるためには、ブランドの教科書でてくる

①ブランドアイデンティティ(ブランドの存在価値)
②ブランドプロミス(ブランドが約束すること)
③ブランドパーソナリティ(ブランドの人格・個性)

を3つを、正しく決めることが絶対に必要となります。

ブランドの教科書の方法論は、きちんと翻訳すれば実務者の方法論に生まれ変わります。次回はブランドの基礎づくりの具体的なやり方を説明します。

【次回コラム】「「なぜか熱量をもって語ってしまうこと」 それが、あなたのブランドの存在価値です。」はこちら

本コラムの前編「ブランドなんか大嫌いなブランド担当者が33年かかって、たどり着いたブランド論」は、こちらよりご覧をいただけます。

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片山 義丈(ダイキン工業 総務部/広告宣伝グループ長/部長)
片山 義丈(ダイキン工業 総務部/広告宣伝グループ長/部長)

1988年ダイキン工業入社、総務部宣伝課に配属。1996年広報部 広報担当、2000年広報部広告宣伝・WEB担当課長を経て2007年より現職。業界5位のダイキンのルームエアコンを一躍トップに押し上げた新ブランド「うるるとさらら」の導入や、ゆるキャラ「ぴちょんくん」ブームに携わる。現在は 統合型マーケティングコミュニケーション(IMC)による企業ブランド構築、マスとデジタルのB2C商品広告展開、広告媒体の購入、グローバルグループWEB統括を担当。日本広告学会員。

片山 義丈(ダイキン工業 総務部/広告宣伝グループ長/部長)

1988年ダイキン工業入社、総務部宣伝課に配属。1996年広報部 広報担当、2000年広報部広告宣伝・WEB担当課長を経て2007年より現職。業界5位のダイキンのルームエアコンを一躍トップに押し上げた新ブランド「うるるとさらら」の導入や、ゆるキャラ「ぴちょんくん」ブームに携わる。現在は 統合型マーケティングコミュニケーション(IMC)による企業ブランド構築、マスとデジタルのB2C商品広告展開、広告媒体の購入、グローバルグループWEB統括を担当。日本広告学会員。

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