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コラム

ブランドなんか大嫌いなブランド担当者が33年かかって、たどり着いたブランド論

「なぜか熱量をもって語ってしまうこと」 それが、あなたのブランドの存在価値です。

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ブランドアイデンティティ(存在価値)がブランドづくりの成否を決める

「存在価値」を間違えて設定してしまうと、ブランドをつくる難易度はものすごく上がります。それくらい「存在価値」はブランドの基礎の中でも、一番重要なのです。

「存在価値〔ブランドアイデンティティ〕」とは、すなわち、あなたの企業や商品が「なぜか、こだわっている」こと、別の言い方をすると、あなたの企業・商品らしさです。

「凄いこと」「差別化されていること」ではなく、「こだわっていること」を存在価値にするのが、重要なポイントです。

「なんとなくうちの会社らしい」とか「商品のこの部分は競合に負けたくない」とか「創業者がこだわっていたので」等々あるのではないでしょうか。そして多くの場合、関係者にとっては当たり前すぎて、大したことないと思いがちです。そもそも気づいていないことも多いです。

繰り返しますが、他の企業・商品と差別化されている必要はありません。教科書ブランドの方法論でやってみて、よく間違えてしまうのは、存在価値を決めていく時に、差別化とか約束とかを同時に考えてしまうからです。

この点については、これまでのこの連載で、くどいほど繰り返しています。

あなたの企業・商品には、素晴らしい特徴や才能はそもそもありません。
他の企業・商品との違いもほとんどありません。

アップルやスターバックスに憧れるのはやめましょう(しょせん、私たちは凡人です!)。
ブランドの教科書に載っている方法論を実務に取り込もうとするのは、凡人のくせに天才のマネをするようなことで、うまくはいきません。

ブランドアイデンティティを決めるときに、素晴らしい特長や自分たちにしかない才能を探そうとする、つまり、そもそもない物を探そうとするから、間違えてしまうのです。

存在価値を決めるときには、社内だけ、関係者だけでやるとうまくいきません。当たり前だから気づかないし、そのこだわりには価値がないと思っているので、存在価値というような大層なものではないと思ってしまいがち。

だから、これを考えるときは、社外の人、関係者ではない人と一緒に検討しましょう。

まず社外の人に、あなたの商品と競合商品の好きなところや良いところについて、できるだけ正直に話してもらいます。つまり「勝手に、人任せで、できたブランド」を聞いてみてください。

その話の中で、自分がうれしいと思うところ、わかっていないなと憤慨するところがあるはずです。

次に、あなたが、社外の人に説明をする番です。

「何で煎餅屋を始めたのか?」(ケーキ屋とかラーメン屋とか、いろいろ商売はあるのに、煎餅屋を選んだ理由はなぜ?)。「最初の商品はどんな商品?」「どうやって開発してどこにこだわったの?(味付け?材料の米?サイズ?焼き方?)」等々を説明します。

一番熱心に説明してしまうところがあれば、そこがポイントです。

外の人からは、そんな大したことではないのに、なんで熱く語れるのだろう?かと思われても、全くかまいません。必要なのは、あなたの熱量になります。

外の人の説明を聞いてうれしいと思ったこと、わかっていないけどわかってほしいと思ったこと、なぜか熱量をもって語ってしまうこと、これがあなたの商品でのブランドの存在価値です。

煎餅屋の店主が、外の人とこの方法論を試して説明をしたとします。

話をしながら、いろいろ考えてみると、あえていうと、なんとなく「醤油煎餅にこだわりがある」「醤油煎餅では負けたくない」、と考えるなら、それが存在価値です。そこに気付けたら最高です(ちなみに、隣の煎餅屋も醤油煎餅にこだわっているからといって、変える必要はありません)。

繰り返します、差別化はいりません。一見大したことのないことでよいのです。

「こだわっていること」であることが何よりも大切なのです。

ブランド論の教科書にある方法論では、差別化や約束を目指すアイデンティティをつくるから失敗します。差別化や約束を意識して、「世界一美味しいことを目指す煎餅屋」にするからうまくいきません。

うち(煎餅屋)は、醤油煎餅も塩煎餅もつくっています。正直、世界一美味しいはずはないし、そもそも、世界一を目指してはいないので、その努力もしていません。

でもお客さんから「おたくの醤油煎餅は美味しい」といわれると「おたくの塩煎餅は美味しい」といわれるよりも、なぜかうれしい。「他の店の塩煎餅の方がおたくの醤油煎餅よりもおいしい」といわれても、別になんとも思わないが、「他の店の醤油煎餅の方が美味しい」といわれると、なんかムカつく。ブランドアイデンティは、この「こだわっているもの」を核として決めるべきなのです。

次ページ 「これほどまでに存在価値が、最重要とこだわる理由」へ続く