これほどまでに存在価値が、最重要とこだわる理由
ではなぜ、存在価値に一番こだわらないといけないのでしょうか?
ブランドづくりには、とにかく、時間がかかります。
ブランドづくりは、生活者の頭の中に企業や商品の妄想をつくることですが、別にあなたの商品のことなどまったく興味ない中で妄想をつくるという、地道な作業で時間がかかるお仕事です。
徐々に浸透していくものであり、一気呵成にというわけにはいきません。
だからこそ、腹落ちしてる存在価値でないといけないのです。
ブランドの教科書通りに、「世界一美味しい煎餅をつくる」としたとします。そして店の看板にも大きく「世界一美味しい煎餅を目指す煎餅屋!」と書きます。あなたも店員も心の中では、ほんとはそんなこと心から目指してないんだけどな~と思っています。お店で煎餅を焼いたりお客さんに販売したりする日々の中で、毎日店の看板を見て違和感を抱きます。こんなの意味あるのかなと思います。
そのうち煎餅屋の店主が変わると、「この看板でいいのかな?」と言い出すでしょう。すると店員みんなが「やっぱり、これではだめですね」となり、また別の存在価値を探します。新しい次の看板は「SDGsにこだわる煎餅屋」かもしれません。こうして、「世界一美味しい煎餅屋」の看板は下ろされてしまいました。
わかりますよね。次の看板もいずれ下ろされる運命です。こんなにすぐに看板が変わってしまっては、時間のかかるブランドづくりはできません。
これが「醤油煎餅にこだわる煎餅屋」という看板だとどうでしょう?かっこよくはないですが、自分たちがほんとにこだわっていることだから違和感がありません。それどころか、なんとなくうれしく誇りに思ったりします。この看板は店主が変わってもずっと掲げられるでしょう。
ブランドづくりは地道で時間のかかる作業です。存在価値が変わってしまうと、最初からやり直しになってしまいます。生活者の頭の中にブランドができる前に、やっぱりだめだからとつくりかえたり、存在価値をつくったとたんに神棚に上に上げて何もしなくなってしまったりするのは、本当にこだわっていないことを存在価値に決めてしまうからです。そしてブランドづくりは失敗します。
ブランドアイデンティティ(存在価値)だけでは、儲かるブランドづくりはできません。
ただし、「醤油煎餅にこだわる煎餅屋」だけをそのまま看板に書いても、儲かりません。
儲かるブランドにするために、次の「②ブランドプロミス(約束)」が役割を果たします。そしてこここそが、実務者の腕の見せ所となります。
【次回コラム】「もし、あなたが煎餅屋の店主だったら? 凡人ブランドがブランドプロミスをつくる方法」はこちら
本コラムの前編「ブランドなんか大嫌いなブランド担当者が33年かかって、たどり着いたブランド論」は、こちらよりご覧をいただけます。
「ブランドなんか大嫌いなブランド担当者が33年かかって、たどり着いたブランド論」バックナンバー
- 実務家はまず自社ブランドが消費者の「想起集合」に入ることを目指そう(2022/9/13)
- 『実務家ブランド論』であえて書かなかった「理論」を解説します(2022/9/09)
- 日本におけるブランドづくりは、いばらの道。だからこそ取り組む価値がある。(2020/9/03)
- そもそもブランドはどうやってできる? ブランド戦略におけるコミュニケーション施策のつくり方(2020/8/20)
- ブランド「戦略」不在 、「戦術」だけのブランドづくりの大罪(2020/8/06)
- SDGsで、ブランドなんかつくれません! 「ブランド論の幻想」に反論します。(2020/7/22)
- 「ブランドパーソナリティ」を偽ると、ブランドづくりは失敗します。(2020/7/09)
- もし、あなたが煎餅屋の店主だったら? 凡人ブランドがブランドプロミスをつくる方法(2020/6/25)
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