コラム

「ダメ出し」から「ホメ出し」へ コピーライター思考の実践

褒め殺すのではなく、褒め生かす。

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褒め殺しがいちばん怖い。

村上春樹さんが何かのインタビューで
そう語っていましたが、
1000%同意です。

え、この連載って、
人にホメ出しする内容じゃないの?
と思われたかもしれませんが、
ただ褒めればいいということでもないのです。

何故なら、褒めすぎることによって、
当人がそこで満足しきってしまう
場合があるからです。
褒め殺しは、未来や可能性を、
摘み取ってしまうこともあるんです。

褒めるとは、
相手の成長を伸ばしたり、
可能性を広げたり、
自信を適度に膨らませる、
進化の一助となるべきです。

これは、相手の「再生ボタン」を
押すような作業
なのです。
他方で、褒め殺しとは、
ときに相手の「停止ボタン」を
押しかねません。

だから、人を褒めるのは
大いに結構なのですが、
「ひょっとして、これ褒め殺し!?」
と思ったらブレーキを踏むべきなのです。

では、どういうときが褒め殺しか?
よくあるのが、
量か質、どれかに問題がある場合です。

まずは、量による誉め殺し。
例えば若いサッカー選手が情○大陸に出て、
「見たよ!」「すごいね!」
と会う人会う人から褒められて、
天狗になって失墜していくケースです。
(例えばの話です)
つまり、賞をとったとか、メディアに出たとか、
IPOしたとか、そういったタイミングにおいては、
瞬間風速的に褒め量が増えてしまうので、
当人は褒め殺される可能性が高い。
だとしたら、その瞬間あなたは、
相手をむやみやたらに褒めない方がいい。
(むしろハッパをかけたりする)

次は、質が悪いことによる誉め殺し。
またまた村上春樹さんの言葉をお借りすると、

世の中で何がいちばん人を深く損なうかというと、
それは見当違いな褒め方をされることだ。

なのです。
だから本書で繰り返し述べているように、
丁寧な観察をしたり
しかるべき魅力の第一発見を目指したり、
地に足をつけながら褒めるべきです。

また、ホメ出しとは、
ホメ道です。
つまり、質や量も大事ですが、
褒めるべき間合いがあります。
ぼくが「今だ!」と思うのは
① 相手が自信を失っているとき
② 相手に努力の跡が見えたとき
③ 自分が相手に嫉妬をしたとき

という3つのタイミングです。

まずは、①相手が自信を失っているとき。
試験の結果がよくない、
営業成績が悪い、競合に負けた。
「自分ってダメなんだな」
と思うときって誰しもありますよね。
努力が足りない、
努力の方向性が間違っていたなど、
もちろん原因が自分にあることもあります。
だけど、やり方は正しかったけど
ただ結果がついてきていない場合もあります。

一時期、ぼくはCMをつくっていたのですが、
いわゆるオーディションの審査を
担当することがよくありました。
そのとき、自分が考えた企画に、
相手がうまくマッチするかを見ています。
つまり、相手の実力だけを見ているわけじゃない。

つまり「結果」とは、
変な言い方になりますが結果がすべてはない、
だからこそ、いい結果が出なくて落ち込んでいる人が
いたら、僕は褒めます。
そこにいたるまでの道を褒めます

つづいて、②相手に努力の跡が見えたとき。
こちらは結果が伴ったとしても、
そうでなくても、
いずれにせよ、努力したこと自体を褒める。
「よくめげずに続けたよね」
「あの分析の深め方は真似できない」
と、その跡をなぞるように褒めます。
RPGでは、経験値を積んでいくと、
レベルが上がりますよね?
そのとき、具体的に数字という視覚情報と
レベルアップするときの音声情報で、
プレイヤーは自分が成長したことを確認できます。
でも、現実では、
わかりやすくレベルの目盛りが
上がっていくものではありません。
親切に、レペルアップ音も鳴りません。
だからこそ、あなたの「褒め言葉」が、
レベルアップを証明する印となります。

そして、褒め生かすときの、
3つ目の最適タイミング。
これは不思議に思うかもしれませんが、
③ あなたが相手に嫉妬したときです。
相手がいい成績をおさめた、いい仕事をした、
自分では手に入れられない幸せをおさめた。
そんなとき、どうしても人は、
ザワッとしたり、ちょっぴり嫌なきもちになったり、
心の底から祝福できないことがあります。
それは裏返すと、相手が、
あなたに嫉妬させるほどの確かな
結果を残したということです。
そんなときは、悶々とせずに、
秒で褒める
ことをおすすめします。

ぼくがまだコピーライターの駆け出しのときに、
ある広告賞で優秀賞を受賞しました。
一方、同期のコピーライター は、
最優秀賞を受賞したんです。
発表会場で、その結果を知ったぼくは、
当然「悔しい!」と思ったのですが、
次の瞬間、グランプリをとった同期に
「いや、あんな切り口があるかってびっくりした。
おめでとう!」

と伝えました。
すると、10年以上が経った今でも相手は、
「あの時澤田が、気持ちいいぐらい褒めてくれた」
と覚えてくれています。

「褒めるといっても、タイミングがわからない」
という質問を受けることがあるのですが、
一番おすすめなのが、この、
「自分が相手に嫉妬をしたとき」
です。
特に練習や勉強や仕事など、
相手の積み重ねが効いてくるような場合において
おすすめです。
また、あなたがライバルのときはなおのこと。
驚きとともに褒め言葉が届くので、
相手は自信をもち、
なにかのご褒美かのように
良好な人間関係もできあがります。
好敵手はいつか仲間になるかもしれない。
だからこそ、ライバルを褒めることも、
ぼくは大切だと思っているのです。

ただし、「永遠に負けた」とは思いません。
あくまで「この試合に負けた」だけなので、
また次頑張ろうと、相手を褒めながら、
自分を鼓舞奮闘させます。

虹プロの総合プロデューサーである
J.Y.PARKさんが話題ですが、
正に「褒め生かし」の神様と思うわけです。
ただし、必ずしもPARKさんのやり方も絶対解ではない。
褒めるとは教科書どおりにやるのではなく、
そこに多様なやり方があってしかるべきなのです。
目的はひとつ。
褒めることで、相手が生きるか。

次回からは、そろそろ褒めの表現について
話していきたいと思います(たぶん)。
また来週!

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