データ分析で コロナ禍と共生する自治体コミュニケーションを再考

 

この記事の講師

牧瀬 稔(まきせ・みのる)
社会情報大学院大学 特任教授

日本都市センター研究室、地域開発研究所等を経て現職。専門は自治体政策、地域政策、行政学。戸田市、春日部市、西条市等の政策アドバイザーに加え、厚生労働省、スポーツ庁、厚木市、逗子市等の審議会委員を担っている。地域創生のため、全国の自治体をまわっている。

 

日常生活に不確実性が強まっている。一方でコロナ禍と共生する道も模索しつつある。そのような中で、地方自治体の役割は高まりつつある。本稿は公共コミュニケーションの中でも「自治体コミュニケーション」に着目し、現時点における課題と展望を検討する。

自治体コミュニケーションとは

まず「公共コミュニケーション」の定義についてだが、公共コミュニケーション学会は「行政・議会・大学・NPO・医療福祉・ソーシャルビジネスにおける広報やステークホルダーとのコミュニケーション」としている。しかしながら、公共コミュニケーションについての決まった定義はまだなく、現時点においては参考文献も多く存在しない(そのため同学会において理論化が進んでいると考えられる)。

次に、自治体のコミュニケーションに限定して考えてみたい。自治体は住民に対して広報と広聴を実施している。広報とは「自治体の事業内容や活動状況を一般の者に広く知らせ、理解を求めること」と定義できる。広聴とは「自治体が一般の者から広く意見を聞くこと」である。もちろん、広聴は一般の者から意見を聞くだけではなく、既存の政策に反映させ、あるいは新しい政策づくりにつなげていくことが求められる。

また、広報と広聴の定義にある「一般の者」とは自然人(住民)だけに限らず、法人や法人格のない任意団体等も含まれる。ちなみに公報と公聴も類似した概念である。

自治体は広報と広聴の両輪をもって、住民や事業者等の一般の者とのコミュニケーションが成立する。このような状態を筆者は「自治体コミュニケーション」と称している。

一般的に「コミュニケーション」とは「伝達、通信、意思疎通などの意味の表現」と定義されている。ポイントは「意思疎通」である。言葉を使った意思疎通だけでなく、文字を使った伝達、身振り手振りによる意思表示などもコミュニケーションに該当する。

つまり「自治体コミュニケーション」とは「地方自治体と利害関係者との政策等に関するコミュニケーション(広報・広聴)活動」と定義できる。自治体コミュニケーションを成功させるためには、①広報により積極的に情報発信し一般の者との共有する機会を設け、②広聴により一般の者から多様な意見や要望等を得ることが大事である。

コロナ禍の課題は広聴

筆者はすべての地方自治体の実情を把握したわけではないが、コロナ禍における自治体コミュニケーションはうまく進んでいないように感じる。その理由は、現時点においては、やや広報に偏っているからである。

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