選手時代から広報活動に積極的だった、中村氏の広報観とは。
※本記事は『広報会議』150号(2021年6月1日発売)より転載しています。
FRO(Frontale Relations Organizer)。フロンターレひと筋18年、チームを引っ張り続けた中村憲剛氏が、引退後に就いた役職がこれだ。フロンターレを取り巻く組織や人との「リレーションズ」を円滑にし、望ましい形にオーガナイズ(調整)するという。ネーミングは自身で行った。
「フロンターレの育成組織のサポートと、クラブの内外問わず幅広い活動範囲でのサッカーの普及・広報。この2軸がメインです。でも役割はかちっと決めずフレキシブルにしたくて。引退後ここまでの間、ありがたいことに多くのお仕事をいただきました。そこで現役時代とは全く別の経験をすることができたのですが、選手時代、自分がいた世界は当たり前ですが狭い世界だったんだなと思います。改めて、こんなにも多くの方々がサッカーを伝える、広めるために動いてくれていることに感謝していますし、今、自分もその中に身を投じながらサッカーをいかにして広められるか、自分なりに考えながらチャレンジしているところでもあります」。
勝負の世界とSNS発信
選手時代から中村氏は積極的にブログやTwitter、Instagramなどで発信を続けてきた。
「フロンターレには選手自ら発信する文化があります。その発信に対するサポーターのリアクションもいい。Twitterを始めた年のJリーグの開幕戦で、勝利後にロッカールームでみんなで喜んでいる写真をツイートしたところ、サポーターの皆さんがすごく喜んでくれて。普段なかなか見られない場所でもありますし、これは出し方次第ですごくパワーになるぞと手応えを感じました。
そこからは勝利後のロッカールームツイートはサポーターの皆さんと勝利を共有するという意味でも自分の楽しみにもなりました。そういう経験を経て、次第に自分は“選手兼広報”のつもりでSNSを更新するようになりました。ただサッカーには勝ち負けがあるので、負けた時は『投稿なんてせずに練習しろ』と言う人も一定数います。それも含めての発信なんです。負けた時こそ真摯な発信をするべきだと思いますし、そう思って投稿を重ねるうち、リテラシーが身に付いてきました」。
