コラム

クライアントとして、企画の殻を破る方法

【第4回】企画選び、方向性で見るか? 個々の内容で見るか?

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リアリティの補完

そして臨んだ、最終選考の追加プレゼン。

事前に各方向性を代表する案として選んだだけあって、いずれも目を引かれるものだった。そして、プレゼンを受けることで、書類だけから読み取っていた以上に深く、広く考えられている背景も知ることができ、提案内容の詳細がクッキリとわかるようにもなった。

正直、一案だけに絞るのは惜しいという気持ちに駆られる。しかし、いずれかを選ばなければならない。前回掲げた6つの指標に沿って、再び丁寧に検討、議論を重ねたうえで、最終的には全員意見の一致のもと、「キャッツアイセイケース」を選出した。

 
選出した案は、社内審査で総じて高得点をマークしていたのだが、実はもう一つ、選出を後押ししたポイントがあった。

最終選考の追加プレゼン時に、当初提案資料には含まれていなかった内容があったのだ。それがアイデアの根幹である「紫外線でよごれを浮かび上がらせる」ことに対する、実証実験の様子であった。

聞けば、自社のオフィスのキッチンシンクの一角を真っ暗な暗室のようにして、ネット通販で手に入れた普及品の紫外線ライトで、提案者自身が丸1日使ったコンタクトレンズに照射、実際に汚れが発光して浮かび上がる様子を見せてくれたのだ。提案のリアリティを最終選考で補完したことで、アイデアの評価もより盤石となり、メンバー一同で納得して選出することになった。

4つめのターニングポイント

そして、さらに嬉しいお知らせが。我々が選んだ企業賞の提案が、全体のグランプリとしても選定されたのだった。

コンペ全体の結果発表と共に、グランプリをアイセイへの提案が受賞したことが公表された後、友人や知己だけでなく、このリリースを聞いたお取引先様からも祝意のお声がけをいただいたりした。自分たちが選定にあたって大事にしてきた価値観と判断軸が、全体の審査員を務める名だたるクリエイター達のそれに並ぶレベルであったという事実。この過程で得た経験はより一層、プロジェクトメンバーに大きな自信と変化をもたらした。

方向性選択→各案検討、各案検討→方向性選択の分類。後者のほうが優れた企画を残しやすく、また、方向性を十分に検討できる

4つめのターニングポイントは、「より優れたアイデアを選び取る過程では、ディテール勝負の前に、バリエーションの豊富さを大事にしたい」である。

同じ視点の企画の優劣を判断することに比べ、視点の異なる企画を比較することは、容易いことではない。異なる思考の下で生み出されたアイデアに優劣をつけるということは、評価者それぞれの判断の「軸」を、否応なしにあぶり出し、徹底的な判断が求められるためだ。そうした覚悟を持って判断に当たることは、結果的に評価の価値を上げることになると私は考えている。

…さて、我々が企業賞に選定させてもらったアイデアが、めでたく全体のグランプリを獲得したわけだが、その後はどうするか。

「おめでとう、良かったね!」といって終わってしまってはもったいない。ぜひとも具現化していくことが、提案いただいた企業側の役目でもある。そして、実は「キャッツアイセイケース」の製品化を目指し、開発を進めているさなかなのだ。

開発の一環として、試作開発サンプルを実際に14日間試してくださる検証モニターを、2021年9月10日までアイセイコーポレートサイトで募集している。

もちろん、具現化の過程には思った以上に色々な困難が待ち受けていた。次回はこのあたりのエピソードについてご紹介したい。

【殻を破って、一つ突き抜けた結果を得るために その4】
最初から小さな違いに閉じこもらないよう、大きな違いを最後まで残しておく。
そして、最後の決断は、エイヤではなく、議論を重ね、覚悟をもって選ぶ。

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