実践③:「非正規流通」と「偽物」を侮らない
またEC上にある同じ商品でも流通経路によって価格が異なります。日本製品の価格については流通経路別に整理すると一般的には以下のようになります。
一般貿易 > 越境EC > 非正規流通 > 偽物
偽物は競合ルートとして論外なのですが、有名な商品は市場に大きな影響を与える規模で偽物が存在します。過去に顧客の依頼で、100以上のショップから当該顧客の製品を購入しチェックしたことがあります。箱のサイズ、印刷などが、一見してわかるレベルの偽物も多くあり、実に1/3程度が偽物でした。
一方で大手ECモールに出店すれば、偽物の排除サポートを受けることができることや消費者は偽物が存在することを当たり前に理解しているため、不当に安い商品を避けて成果販売の正規店で購入する傾向も強くあります。このように自社商品がどのように広まっているのかを認識しておくことが重要です。
さらに状況を複雑にしているのが非正規流通の商品です。コロナ禍になる以前の訪日客の多かったころに百貨店で、爆買いしている中国人を見かけたことがあるかもしれません。そのほとんどはいわゆるバイヤーです。
彼らは家族や友人に依頼された商品を旅行ついでに買って帰る一般的な「爆買い」とは異なる職業バイヤーです。彼らバイヤーに調達を依頼する元締の多くは香港を拠点にするドロップシッピング企業で中国の大手ECモールやその出店者を顧客に持ち、海外製品を安定して供給する役割を担っています。香港から大陸へは特別なルートが存在し、一般貿易課税や越境EC課税と比較して低価格での最終消費者まで繋ぐ販売ルートを構築しています。
バイヤーは店頭で購入するので一見すると価格的なメリットを出すことは難しいように思われます。しかし売場が限定されほとんど値引きのない高級化粧品でも、店頭で例えば10万円以上購入時の割引やポイント還元、同一ブランドの試供品提供などにより、実質的には定価の80-85%程度で仕入れることが可能となり、一定の競争力を持つようになります。
越境ECは税制面で一般貿易と比較して優遇されるのですが、モール内では非正規流通品を扱うショップとの競争となり価格面で有利に立てません。ですが、その下に偽物があるため非正規も消費者からの信頼獲得が難しく信頼獲得面では正規旗艦店の定価販売に劣り、結果本物を求める消費者は多少価格差があっても、正規旗艦店から購入している方もいます。
メーカーの立場なら一般貿易、直販EC、非正規であっても売れれば利益に直結します。流通の場合は流通としての信頼度と価格対応力があれば一定の範囲で対応可能です。出店後は自社商品が大手モールのどのようなショップでいくらで販売されどの程度売れているのか。
これらを常にチェックしながら必要な対策を講じることも重要な仕事となります。
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