実践②:中国アプリ内での戦い方を抑える
一方で大手モールに依存せず自社ECショップ開設の強力なツールとして最近注目されているのが先述したTencent社のWechatミニプログラムです。ECに強いAlibabaに対抗するために、SNSに強いTencentが創出したWechat内のアプリで、特に自社ECの開設が容易にできるように機能設定されています。
大手モールに出店しても、他店競争が激しく、モール内広告費や販売手数料が厳しいため、自社サイト開設に対する企業ニーズが強く、それに応える形でTencent社がリリースしました。独立サイトそのものに対して信用不安を持つ消費者に対してTencent社のWechatPayを介した保証によって信用担保。さらに販売手数料なども現時点ではなく運用コストがリーズナブルにおさえられています。
成功のためのポイントは、「集客力」です。中国ではGoogleのような利用データがオープンになったWeb環境がなく、デジタルマーケティングによる外部集客のPDCAが非常に難しい状態にあります。
また先述したようにBAT間の競合関係の「制約」で自社ショップへの集客方法が限定されます。ミニプログラムの場合、広告手段としてはTencent社系列のWechatモーメンツ広告が主流ですが、有効な広告枠なため、競争が激しく結果高額になる場合が多いです。そのため自社独自の集客方法を持っていることが重要となります。
例えば訪日中国人をWechat公式企業アカウントのフォロワーとさせ、緩やかなリテンションを維持しながら、自社のミニプログラムに誘引するなどの方法が考えられます。訪日時に店舗で購入、帰国後もミニプログラムで継続して購入していただく。その顧客を核として知人に拡げていただくといった手法です。
この顧客資産をベースに一定の成果を上げながらSNSを活用して認知拡大し訪店者以外へのリーチを獲得していくようなステップを踏めば十分に戦えると考えます。コロナ禍で旅行客が減少し多大な影響を受けた韓国免税企業は、新しい打ち手としていち早くミニプログラムを活用したECショップを開設しています。過去に免税店を訪問した顧客をWechat公式企業アカウントで取込み、その顧客に対して開設を告知しショッピングの機会を提供するといった流れです。
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