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【CES2022】パンデミックが社会全体のイノベーションを加速させる(森直樹)

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年の初めに1年間のテクノロジートレンドを知ることができるイベントである、世界最大規模のテクノロジーカンファレンス「CES」が今年もやってきた。今年はパンデミックの影響下だが、オンラインとオフラインのハイブリット開催となった。筆者は現地へ向かう予定だったのだが、残念ながらオミクロン株のリスクが高まるなか、今年もリアル参加は断念、オンラインでの参加となった。

2年ぶりのリアルもある2022年CESは、北米(ラスベガス)時間で1月5日〜1月7日の3日間にわたって開催され、世界中から2200社以上の出展、40以上のオンラインをライブストリーミングが予定されている。

CESでは、スマート家電に始まり、モバイル、自動車、ロボティクス、IoT、AI、XRなど、先端的な取り組みに触れることができる。テクノロジーは、企業活動、ライフスタイル、そして持続可能な社会を考える上で、もっとも重要な変化への影響を持ちます。米国を中心とした先端企業の発信は、マーケターにとっても注目すべきことが多くあるのではないだろうか。

テック・トレンド・ウォッチから今年、注目のテクノロジーを俯瞰する

CES2022レポート第1弾は「CES2022:Tech Trends to Watch」からレポートする。これは、参加が記者に限定されるイベントなのだが、CESの主催者であるCTA(全米民生技術協会)アナリストによるセッションである。CES2022の注目ポイントだけでなく今年1年のテックトレンドを占う上でも欠かせない情報源と筆者は考えている。まずは、今年のCTAからの発信を詳しくレポートする。

電通 森氏が注目する「CES2022」
サムスンの基調講演にプレゼンを学ぶ
2022年のテックトレンドについて解説するCTAのVP, Research Steve Koenig氏

パンデミックがイノベーションを加速させる

セッションの冒頭でSteve氏は、イギリスの経済学者であるクリストファー・プレマの分析を引用し、現在のようなパンデミックの環境下においてはイノベーション加速する傾向にあり、さらにそれらが束となって解き放たれ経済、社会、消費者の体験、生活のいたるところのレベルがより良くなると、テック業界の楽観的な観測を示した。

同氏の主張は、昨年のCESと同じであるが、スタートアップの集積展示がなされているEureka Parkが再開され、世界19カ国800社以上のスタートアップがCESに再び集結した話に繋げ、CESがスタートアップによるイノベーション創出に寄せる期待を示唆しているものと言える。

さらにSteve氏は、テクノロジー関連商品に対する消費者の需要が歴史的なまでの高さに達していることに触れている。GFKのデータからは、昨年の第1四半期から第3四半期まで、世界中で対前年から大きく成長していることを示している。

また、別のデータソースにより米国では5兆ドルを超えるコンシューマーテクノロジー製品の市場が見込まれることを提示し、この成長トレンドがまだまだ続くことを主張していた。 

GFKの調査では世界のテクノロジーの需要は引き続き堅調なことを示している。

米国のコンシューマーテクノロジー産業の予測では2022年は5兆ドルの市場規模に。

「パンデミック・ピボット」という概念

Steve氏はセッションで、パンデミックの影響下、消費者が多くの行動の変化を経験し、様々な方法で生活様式を調整(変化)する必要にせまられ、実際に変化させてきている。この状態をパンデミック・ピボットと名付けている。

ちなみに、ピボットとは経営や新規事業開発、投資の世界で方針転換や軌道修正を示す言葉として使われている言葉である。Steve氏は、パンデミック・ピボットについて、パンデミックで多くのサービス(例えばコネクテッドフィットネスを例にされている)が生まれ、急速な普及と重要性が、消費者の行動を再構築していることを例示している。

米国と欧州の調査から、消費者は新しいサービスを支持していると説明している。ストリーミング、ウェルネス、フードデリバリーにおいて4〜5割の消費者は過去12ヶ月で新しいサービスを導入し、6割以上が継続していることを示している。

5GとAIは、イノベーションを結合する重要な要素技術

Steve氏はCESの会場で発信される主要な製品のトレンドを解説している。特に重要な要素として“接続性”としての5Gについて触れた。5Gの本当の価値は、デジタルトランスフォーメーションであり産業用IoTへの接続を提供することだという。

さらに、AIは日々深化してより多くのことができるようになったことについて、農業での採用ケースで解説をしている。AIを活用すれば、畑に生えている望ましくない芽を識別することができ、農薬を畑全体に散布するのではなく、個別に散布することができるようになるという。結果、除草剤をへらすことで、農家のコストを削減し、食費を抑え、農家の収益性を向上させ、さらには地球にも優しい。AIは持続可能なストーリーの一部であることに触れ、AIを含め「Tech for Good」はたくさんの例があることを解説している。

Steve氏は農業AIから、AIに関わる消費者トレンドについても触れ、消費者はAIが家事や工場の手伝いをすることに前向きであることをデータから示し、消費者がイノベーションやAIがより広く貢献することに前向きであり、経済全体に影響することであると言及した。

接続性の向上がデジタル経済を支え、要素技術として5GとAIの重要性であると説明。

AIは進化し、アプリケーション領域が広がっていること、産業と生活への広く浸透していると説明。

消費者はあらゆる領域でAIの力を活用することに前向きであるという。

次の主役はメタバースか?

日本でも最近、話題のメタバースであるが、このテックトレンドでも単語として初登場した。メタバースとは没入感のあるデジタル提供する次世代インターネットを表現したものであるとSteve氏は解説している。今後、10〜20年の間に私たちの物理的な現実と密接に結びつくことを予想している。このことは、企業のVR採用のトレンドからも予測できるとしている。

ちなみに、米国は日本以上にVRを企業が積極的に取り入れエンタテインメント以外にも、遠隔会議や共創・機器の保守・医療などあらゆる分野で実験的にもしくは、すでに機能として取り入れられている。Steve氏は、メタバースが、仮想化された会議やトレーニング、セミナーそして消費者向けの多様性のあるサービスやソーシャルメディアなどが増えていく可能性について触れていた。

メタバースへのアプローチとCESでの体験について紹介。

企業のXR活用が広く展開されていることに触れている。メタバースもこの流れを辿るか?

サスティナビリティが大きなテーマに。

最後に、2022年のトップトレンドについて紹介している。EVを含め交通や21世紀型物流のテクノロジー、スペーステック、サスティナビリティ技術、デジタルヘルスである。特に、サスティナビリティの観点で、スマートシティというマクロな視点と、スマートホームというミクロな視点について触れている。スマートシティやスマートホームをサスティナビリティのカテゴリーとして捉えているのは非常に興味深い。

注目するべき今年のテックトレンド。EVや自動運転による新しい交通、サスティナビリティに関わるテクノロジー領域、パンデミックの文脈で、注目されるヘルスケア関連技術、セラピーなど心のケアに関わる技術やサービスなど新しい領域に注目していることが伺える。

今年も、CESに家から誰でも参加できる

今年のCESはオフライン解禁だが、オンラインでも開催。展示物に触れることはできないけど、多くのセッションにはオンラインで参加できる。筆者は、CESの醍醐味は展示会場で多くの新しい技術にモノとして触れるのと同等以上に、米国大企業の経営者層の発信に直接触れることで得られることが大きいと考えている。

そして、オンラインから参加すると言語の壁を超えられるのだ。ウェブストリーミングには同時通訳機能が付いているし、ウェブサービスを利用すれば、英語の講演をリアルタイムで書き起こしてくれる。書き起こされた英文を読むのが苦手なら優秀な翻訳ツールが多くある。読者の皆さんには、今からでも間に合うので是非ともCESの参加をされることをオススメしたい。

というわけで、今回のCES2022は“今年も完全オンライン”版をお届けしたいと思う。
 

森直樹
電通 ビジネストランスフォーメーション・クリエーティブ・センター エクスペリエンスデザイン部長/クリエーティブディレクター。

光学機器のマーケティング、市場調査会社、ネット系ベンチャーなど経て2009年電通入社。米デザインコンサルティングファームであるfrog社との協業及び国内企業への事業展開、デジタル&テクノロジーによる事業およびイノベーション支援を手がける。公益社団法人 日本アドバタイザーズ協会 デジタルマーケティング研究機構の幹事(モバイル委員長)。著書に「モバイルシフト」(アスキー・メディアワークス、共著)など。ADFEST(INTERACTIVE Silver他)、Spikes Asia(PR グランプリ)、グッドデザイン賞など受賞。ad:tech Tokyo公式スピーカー他、講演多数。