「これ、俺の話だ」「私の話だ」人々が共感する“燃え殻泣き”が起こる理由(ゲスト:燃え殻)【後編】

【前回コラム】ベストセラー作家による魂の叫び「普通にできないという呪いが解けない」(ゲスト:燃え殻)【前編】

今週のゲストは、先週に引き続き、小説家の燃え殻さん。小説『ボクたちはみんな大人になれなかった』の制作秘話についてうかがいました。

今回の登場人物紹介

左から、中村洋基(すぐおわレギュラーゲスト)、燃え殻。

※本記事は2021年11月7日放送分の内容をダイジェスト収録したものです。

“燃え殻泣き”が起こる理由

中村

:改めて、燃え殻さんから新作映画『ボクたちはみんな大人になれなかった』について、説明をお願いします。

燃え殻

:私小説ってやつですね、ほぼ。

権八

:そうですよね。

燃え殻

:私小説って言わないと齟齬が出るっていうか。怒る人が出てくるっていうことで……。

中村

:えっ!?

燃え殻

:「私小説でどっかに嘘がありますよ」「ほとんど自分の話ですよ」と。僕が最初に恋愛をした人の話と、社会に出ていってから今までの話。それがちょうど90年代~2000年代の間の話。例えばポケベルからスマホまでとかかな。

権八

:はいはい。

燃え殻

:東京がいろいろと、分かりやすく変わっていく。それを小説に書いていたら、90年代のことをあまり書かれた作品がなかったので、ちょうど当たっちゃったっていうか。

権八

:へえ~。そうか。

燃え殻

:そこを書きたかったわけじゃないんですけど、そのときにたまたま東京にいたんで。そこに僕はまた馴染めず、彼女もあんまり馴染めていなくて。その彼女と文通で出会って、ずっと安いラブホテルにいたって話なんですけど。

中村

:そんな描写もあり。

燃え殻

:うちの母が喜ぶわけがない小説なんですけど(笑)。

権八

:いやいや! いいんじゃない、それは。

中村

:でも、お母さまが思うかもしれないのは、周りや付き合う女性が普通であることをそれなりに求めていくんだけど、伊藤沙莉ちゃんだけは原体験としてそうではないじゃないですか。普通であることに異を唱えて、それに主人公の森山未來が影響されていくという。それを見たら、お母さまも「私、『普通、普通』って言い過ぎちゃったのかしら」と思うかもしれないですよね。

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