
東京片岡英彦事務所 代表
企画家・コラムニスト・戦略PR事業
片岡英彦(かたおか・ひでひこ)
日本テレビを経て、アップルコンピュータのコミュニケーションマネージャー、日本マクドナルド マーケティングPR部長などを歴任。企業のマーケティング支援活動のほか、WOMマーケティング協議会発足時のガイドライン検討委員、アップデートチームメンバーを務める。東北芸術工科大学 企画構想学科 教授。
「ステマになる・ならない」の具体的な境界線はどこ?
では、WOMマーケティング協議会が2010年に制定、2017年に改訂した口コミマーケティングに関するガイドラインをもとに、「ステマ」と一般的な「宣伝」との“境界線”のポイントについて解説した。後編にあたる本記事では、実際によく問い合わせを受ける内容などをもとに10の事例を挙げながら「ステマになる」「ならない」の違いについて、理解を深めていこう。
1)口コミと広告の“境界線”は何か?
Q1
インフルエンサーにお金を払っているが、「投稿内容」についてはインフルエンサー自身の判断に任せている。自社から「良いレビューを書いてくれ」とも言っていない。これは「ステマ」にあたるのか?
A
投稿内容に指示をしている場合は「口コミ」=「広告」になる。便益を与えて投稿を依頼する以上は、「関係性の明示」を行うことが原則である。「内容を管理していない」からといって、そのことを理由に「広告ではない」と見なされるわけではない。
一方で、公開される内容に関しては「口コミ」と「広告」には違いもある。
・口コミ=消費者間で行われる自発的なコミュニケーションであって、原則として投稿内容は情報発信者に委ねられる(事前に企業側が内容を把握する場合もある)。
・広告=企業側がその内容に関して事前に全てを把握し、内容の責任を負う。
つまり「口コミマーケティング」とは、広告的な要素をもちつつ広告とは異なる広がりをもつマーケティング活動とされる。
2)仲介者(代理店)を介して便益を供与した場合
Q2
A社から依頼を受けたPR会社(B社)が、インフルエンサーであるC氏に金銭提供を行った。この場合、C氏に直接接触するのはB社である。A社とC氏の間に「関係性」はあると考えるのか?C氏の投稿にはA社との「関係性の明示」は必要か?また、B社の名称は明示されなくてもよいのか?
A
C氏に直接接触するのはB社であっても、A社とC氏の間に「関係性はある」と見なされる。この場合、A社の名称が投稿に明示されなければならない。A社との関係性が明示されていれば、代理店であるB社の名称は必ずしも明示されなくてよい。