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コラム

澤本・権八のすぐに終わりますから。アドタイ出張所

第一印象は「なんやこれ?」500本の頂点に立った狂気のラジオCM(ゲスト:井村光明・髙橋ひかる)【後編】

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グランプリは500本のなかで、最も“おかしい”CM

権八:では、2021年のACC TOKYO CREATIVITY AWARDSラジオCM部門、ACCグランプリを受賞したCMを、聞いていただきましょう。大日本除虫菊の「虫コナーズ」で、「虫コナーズで名言を」。全部で6本あるうちの2つ。「夏が来る」と「去年のあなた」です。

ACCグランプリ 
大日本除虫菊「虫コナーズ」
 
「虫コナーズで名言を 夏が来る」篇

男性ナレーション:キンチョウ虫コナーズで、名言を吐くよ。
男性歌声:はい!パパラパッパパヤ、ズンパラパッパパヤ。ズンパラパッパパ、ズンパラパッパ、ズンズンズン。ズンパラパッパパヤ、ズンパラパッパパヤ、ズンパラパッパズンパラパッパ、ズンズンズン。ズンパラパッパパヤ、ズンパラパッパパヤ、ズンパラパッパズンパラパッパ、ズンズンズン…
男性ナレーター:あったら教えてくれないか。去年の虫コナーズをぶら下げている意味。夏が来るからぶら下げるんじゃない。虫コナーズをぶら下げるから、夏が来るんだよ。来るんだよ、来るんだよ、来るんだよ…
男性歌声:ズンパラパッパパヤ、ズンパラパッパパヤ、ズンパラパッパズンパラパッパズンズンズン

 
「虫コナーズで名言を 去年のあなた」篇
男性ナレーション:キンチョウ虫コナーズで名言を吐く。
女性歌声:ズンパラパッパパヤ、ズンパラパッパパヤ、ズンパラパッパズンパラパッパズンズン。ズンパラパッパパヤ、ズンパラパッパパヤ、ズンパラパッパズンパラパッパズンズン。ズンパラパッパパヤ、ズンパラパッパパヤ…
男性ナレーション:今年虫コナーズを取り替えようと思って、虫コナーズを取り替えたあなたは…
男性・女性歌声:ズンパラパッパパヤ、ズンパラパッパパヤ…
男性ナレーション:虫コナーズを取り替えようと思って、虫コナーズを取り換え忘れた去年のあなたでは、もうない。
男性・女性歌声:ズンズンズンズンズンズンズンズンパー

権八:はい。

澤本:これよ。

権八:ありがとうございます。

一同:ははは。

権八:30秒以上、ズンパラパッパ。

澤本:たぶん45秒くらいズンパラパッパ。

権八:ですよね。

井村:名言を吐くよと言って、25秒ぐらい音楽で引っ張って、ズンパラパッパって喋り始めるっていう。

権八:いや~、面白かったですね。

澤本:これは審査員長的にどうですか?

井村:象徴的だなと思ったのは、やっぱり緩くて聞きやすいじゃないですか。原稿でこれ見ると、たぶん一言を聞かせるために引っ張ってるんだっていう理屈もたつと思うんだけど、引っ張ってるってよりは、すごく聞きやすくしてるなと思ったんですよね。ナレーションを削って。

20秒でつくれるものを、わざわざ60秒に伸ばしてんだなと思ったんですよ。そういう聞きやすさ、心地よさっていうのが2021年はムードとしてあったんじゃないかなと思います。家でラジオかけてて、あんまり集中しなくても、スっと入ってくる感じっていうのが、あったんじゃないかなと思いましたね。

澤本:髙橋さんはどうですか。

髙橋:そうですね。最初聞いたときに、「何やこれ?」って。ちょっと一瞬。

一同:ははは。

髙橋:聞き馴染みのないものだったので、そうなるじゃないですか。けど、どんどん聞いてるうちに、「何言うんやろな?」ってワクワク感もありましたし。「ズンパラパッパって、いつまで言ってはるんやろな?」っていうのもありながら。「当たり前の事言うやん!」みたいな感じの、裏切らないワクワク感もありましたし、何度も聞きたくなっちゃうというか。空間に誘われちゃうんですよね。ズンパラパッパの。取り込まれちゃう感じがすごい。言葉にできない。それこそ本当に聞き心地の良さというか。何なんですかね。

井村:昼のラジオでよくかかってて。僕、オンエアで結構よく聞いたラジオだったんですよ。それで、飽きないんですよね。毎日同じ時間にラジオ聞くとかかってるけど、言葉も微妙に変わってくるし。

澤本:聞いたんだけど、ズンパラパッパパヤって歌は、『ゴレンジャー』の……

澤本権八:バンバラバンバンバン。

権八:ですよね。

澤本:なんだってね、元々は。それを新しく、バンバラバンバンバンの作曲家の人につくってもらって。

権八:へえ~。

澤本:その作曲家が97歳でいらっしゃる。

権八:はいはい!

澤本:こういうのつくってくれって言ったら、ズンパラパッパパヤっていう歌詞も加えてくれたんだって。

権八:なるほど。

井村:これ、本物だからね。

澤本:本物がつくってるから強いんだろうなって、すごくあるな。

権八:確かに。『ゴレンジャー』でバンバラバンバンバン。

井村:審査員の方のご意見で印象的だったのは、澤本さんが「このバカバカしいけどすごいちゃんとお金をかけて、ラジオを真剣につくってる感じっていうのをやっぱり褒めてあげたい」っておっしゃっていて。

まさにそうだなと思って。お金をかけているといっても、テレビと違ってそんなにお金はかかってないはずなんですよね。でも、案外投資効率がいいというか。ちょっと頑張ればすごいのがつくれるんだなっていうのが、ラジオの世界でもあるかなと思います。

澤本:僕らって、秒数があると詰め込もうとするじゃない?いろんなものを。これは全部、極力排してるから、余白だらけだよね。余白だらけの方が2021年は聞きやすかったし、これぐらい聞きやすくて、ただずっと聞いていたいなってものを、一等賞に選びたかった年だったんじゃないかな。

権八:でも、ラジオじゃなくても言えることで、今はもう企画書にあるような言葉をそのままCMのセリフでやっていて。どんどん効率論になっていってるじゃないですか。テレビもラジオも。

澤本:そうね。

権八:それが、これだけ余白あって。だって、これ20秒でできるよね、本当にね。20秒でできる内容を60秒に引っ張って、そこにすごい豊かさを感じるんですかね。

澤本:でも、何かしら他と違って、これは際立っていたんだと思う。それこそ500本くらいバーッと聞いたときに、他のCMと比べて。

権八:500本!

澤本:これ、一番おかしいんだもん。

権八:そうですよね。

澤本:全く違う。他と。

権八:そうか。

澤本:目標点が違っている。

井村:この間ACCのオンラインイベントがありまして、審査員長たちが集まって、各部門のグランプリを聞き合う会があったんですけど、僕の前がクリエイティブイノベーション部門で、国土交通省の3Dデータをもとに国を作るといった作品がグランプリだったんですよ。その次がラジオ部門で、「ズンパラパッパパヤ」って流れちゃったんですけど(笑)。でも、まさにそこかなと思って。

今世の中が効率っていうか、理屈っぽいものが多くて。ACCの各部門も大事ですけど、ふとラジオ部門のグランプリのあとにみんな脱力しちゃうっていう、そういう効果ってあると思うんですね。ラジオのクリエイティブには。そういう意味でも象徴的だったのが、ズンパラパッパパヤだったような気がしました。

権八:見事でしたね。

一同:おめでとうございます。

次ページ 「まだまだある!独創的な受賞作CM」へ続く