東京を中心に日本全国で活躍するコピーライターやCMプランナーの団体である東京コピーライターズクラブ(TCC)。「TCC賞」応募作品の中から、コピーの最高峰を選ぶ広告賞「TCC賞」の入賞作品と優秀作品を収めた『コピー年鑑』は1963年に創刊、2022年度で60冊目を迎えます。各年鑑はその時々の時代性を広告という側面から反映した貴重なものとなっており、特に、コピーに関してはバイブル的存在として受け入れられています。そんな『コピー年鑑』をテーマに、本コラムではTCC会員であるコピーライターやプランナーが執筆。第13回目は、サントリーBOSSを手がけており、『コピー年鑑2020』の編集長を務めた照井晶博さんです。
最近ネタバレを見てから映画を観る人が多いらしい。検索が日常化して、知りたいことを瞬時に受け取ることは普通になった。Tipsなるものがありがたがられるのも、うまくやる方法を効率的に手に入れたいという人が多いからなのだろう。気持ちはとてもわかる。わかりみしかない。コストはなるべくかけずにリターンは得られるだけ得たい、という正直な心に、こうするといいよ!とやさしく、あるいはカッコよく教えてくれる本は不思議と目にとまる。そうした本は書き方もうまいもので、これなら自分にもできそうな気がしてくる……のだけれど、実際に書いてみると、読む前と比べていいコピーがバンバン書ける!ということにはなっていない。という経験、ありませんか?(ぼくにはあります)
ではなぜこういう悲劇がおきてしまうのか。それは決して本のせい、ということでもなくて。おそらく自分の頭で考えることをなるべくショートカットしたい。もっと言うと、できることなら誰かにかわりに考えてもらって答えだけ知りたい、と、ついつい思ってしまうような脳の使い方に慣れてしまっているからじゃないか……というのが現時点での結論です。本を一冊読めば、方法論というOSがまるっとインストールされる、という都合のいいことを期待しすぎ、というか。