
国際大学グローバル・コミュニケーション・センター
准教授・博士(経済学)
山口真一 氏
本記事は広報会議2023年1月号からの転載記事です。
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シエンプレ デジタル・クライシス総合研究所の調査によると、2021年の炎上発生件数は1766件だった。一日あたり約5件発生しており、今日もどこかで誰かが燃えているのが炎上の現実なのである。
さて、2022年も大きな炎上が起こっているところだが、本稿で取り上げる3つの炎上は、いずれも「隠蔽しようとして炎上が激化した」という共通点がある。各特徴をレビューしよう。
船橋屋社長、恫喝動画が拡散
社長(当時。以下、前社長)が、追突事故時に相手方を恫喝した動画が拡散され、辞任した。前社長側が火消しを図ったが、インフルエンサーが動画を再投稿し炎上。船橋屋は事実関係を認め謝罪した。
本件が批判の的となった背景には、インフルエンサーによって当該動画が取り上げられたことにある。老舗和菓子屋を運営するブランド力ある同社において、有名な社長(当時)だったことが話題を呼んだが、同時に、「火消しをしていたこと」が内部告発によって暴露され、炎上を激化させた。
この内部告発によると、前社長による恫喝動画の初出は炎上の2~3週間前であったが、当初は社内上層部で、マスコミ対応やSEO業者を雇っての火消しにあたっていた。また、前社長がパワハラを行っていたことも明らかにされている。これらの事実が、前述したインフルエンサーによって、告発DM(ダイレクトメッセージ)が画像付きで投稿され、大炎上に発展した。
隠蔽の事実が残る時代
本対応の問題点を挙げるならば、最初の動画が投稿された9月上旬の時点で火消しを行おうとしたことであろう。不祥事が出た際、隠蔽を図る企業は多い。しかしSNS時代では、隠そうとしても、内部告発等によって簡単に拡散されてしまう。さらに一度インターネット上に広まった情報を完全に消すことは不可能に近い。様々なユーザーが問題とされるコンテンツをコピーして再アップロードするケースがほとんどである。その結果、隠蔽しようとした事実だけが残るという、百害あって一利なしの対応となってしまう。
そのため、該当動画の投稿が判明した時点で、火消しではなく、事実確認を行うべきであったといえよう。そして恫喝が事実なのであれば、同社に明らかに非があるので、その時点で公表・謝罪をすべきであった。