毎年、約173カ国から参加する巨大なイベントだが、もともとCESは家電ショーとしてスタートした。しかし今日ではテクノロジーとイノベーションのイベントに変化を遂げている。CESでは、スマート家電に始まり、モバイル、自動車、ロボティクス、IoT、AI、XR、そしてWeb3や環境に至るまで、先端的な取り組みに触れることができる。ここで触れることができるテクノロジーは、産業からビジネスモデル、ライフスタイルを大きく変化させることは間違いなく、マーケターにとっても注目すべきイベントだと言える。
コロナ禍を超えて久しぶりに、現地より「アドタイ」視点で、森直樹氏が最新情報をレポートする。
CES現地レポート第4弾は、今年から存在感を高め始めた重厚長大産業に属する、B2B企業によるカンファレンスでの発信に注目したいと思う。もちろん、CESにはこれまでも重厚長大産業に属するB2B企業は出展していた。しかし、今年のCESはこれまでと違い、彼らを新しい主役の一人として迎え入れていたように感じる。筆者にとって印象的だったのは、公式開催初日の最初の基調講演を担ったのが、世界最大の農業機械製造業であるJohn Deereだったことだ。サムスン電子でも、IBMでも、デルタ航空でもWalmartでもGMでもないのだ。さらに、筆者にとってプレスカンファレンスでもサムスン電子やBOSCHなどと引けを取らない印象を残したのがHD HYUNDAIだ。
この2社のプレゼンテーションのクオリティは非常に高いものであった。全体のストーリー、プレゼンテーションの映像表現の質が高く、大きな地球の課題への問題意識から彼らの製品・ソリューションに至るまで非常にわかり易く、鮮明にオーディエンスにメッセージが届いていたのではないかと筆者は感じている。そこで、現地レポート第4弾は、このB2B企業2社に焦点を絞り、基調講演とプレスカンファレンスで彼らが発信していたプレゼンテーションやその表現を中心にお届けしたい。是非とも、B2Bを担う日本企業の皆さんの示唆、参考となれば幸いである。
農業機械メーカーからAIとロボティクスカンパニーへ変化を遂げたJohn Deere
まずは世界最大の農業機械メーカーのJohn Deereからレポートしたい。1月5日の基調講演会長兼CEOのJohn氏が登壇、同社は186年もの間、イノベーションをリードしてきたことを同社の歴史の紹介を皮切りに説明を始めた。John氏は持続可能な社会の実現のために、テクノロジーがいかに人口が増加する人類の食料確保に貢献しているのかについて、「私たちが必要とする食料、燃料、繊維を育てるという大変な仕事を担っているのは、世界中の農家の方々です。彼らは、私たちが今日必要なものを手に入れるだけでなく、将来の世代にも必要なものを提供することを保証しているのです」と、この業界に従事する全ての人へのリスペクトを表した。