周囲との情報交換がアイデアに、本の制作過程も発信
――創業は明治時代とお聞きしました。
1891(明治24)年、明治神宮も表参道もない時代に山陽堂書店は創業しました。うさぎ年に開店したので、ちょうど干支を11周しました。僕で5世代目になります。
昭和50年代、近隣に美容院が増えた影響もあり、雑誌が飛ぶように売れていたと聞いています。かつては雑誌の売り上げが全体の7割を占めていましたが、現在は書籍が7割、雑誌は3割ほどとなっています。
――山陽堂書店ならではの特徴を教えてください。
2階にギャラリーを、3階では喫茶(不定休)を営業しています。ギャラリーでは本や青山の“まち”にまつわる展示をご覧いただくことができ、喫茶では本をゆっくり読むことができます。
店舗には昔から馴染みのお客さまや、近隣に居住している方の来店もあり、お客さまとのコミュニケーションも活発で、最近の街の様子などちょっとした情報交換も盛んです。喫茶で生まれる会話から本について教えてもらうことも多く、ギャラリーや喫茶でのイベント開催につながっていることもあります。
以前、ブックデザイナーの藤田知子さんにおすすめの一冊を共有いただいたことから、現在毎月開催している読書会「山陽堂ブック倶楽部」のアイデアも生まれたんです。
――選書のこだわり、棚づくりの工夫を教えてください。
選書は当店で働いている皆で行います。それぞれがいいと思った本や、お客様との会話で気になった本などをセレクトして展開しています。本の魅力を伝えることや、作り手の熱量を感じられる書籍を置くという点も常に心がけています。
2011年からギャラリーを併設したことで、本を陳列する以外の方法でも本の魅力を発信できるようになりました。2階のギャラリーでは、絵本の原画展や書籍の装画などで活躍されているイラストレーターの方々の個展などを開催しています。
本が完成する前段階の原稿を展示することもあり、なかなか目にすることのできない制作過程も見ることができます。
書店で働いている僕自身も、売るだけでは気付くことができなかった側面を発見できていると感じますね。
ギャラリーのある本屋になり青山にアートやクリエイティブを発信しはじめる
――以前はイラストレーター教室の運営を行っていたりと、クリエイティブが生まれる場ともいえるでしょうか。
2013年から2017年まで開講していた山陽堂イラストレーターズ・スタジオですね。初代をイラストレーターの安西水丸さん、2代目はアートディレクターの長友啓典さんが講師を務めてくださっていました。安西さんと長友さんが他界され、現在は開講していませんが、生徒だった方の中にはその後イラストレーターとして活躍されている方もいらっしゃいます。


