広報担当者のための「企業ミュージアム」見学のすすめ

創業の精神や事業の変遷、将来の方向性などを体感できる企業ミュージアム。社内研修でも使われ、企業文化の醸成や共創・イノベーションの種を見出す場としての機能もある。展示空間に施された創意工夫は、企業広報を考える、さらには挑戦する企業風土を育む上でのヒントになる。

※本記事は、『広報会議』2023年4月号企業ミュージアム特集より抜粋しています。

手触り感あるオウンドメディア

伝えたいメッセージを企業自らが空間で表現する「ミュージアム」は、企業コミュニケーションにおけるオウンドメディア(自社メディア)のひとつと整理できる。

「オウンドメディアと言えば、社長交代発表を生配信した『トヨタイムズ』に代表されるように、オンライン上で社内外に確実に伝えたい情報を発信するスタイルが定着しつつあります。一方で企業ミュージアムは、創業者直筆の書が読めたり、製品第一号が展示してあったり、館内を案内してもらえたりと、手触り感があって組織の雰囲気が伝わりやすいメディアです。見学者は展示を通じて “組織に脈々と受け継がれ積み重ねてきたものが今の会社をつくっているのだ” と実感できます」。こう話すのは、『カルチャーモデル 最高の組織文化のつくり方』著者の唐澤俊輔氏。

企業ミュージアムなら見学者が歩きながら自身のペースで情報を取得できるため、企業理解が深まりやすい点も特徴だという。

起業家精神に触れ新事業創出へ

特に創業時の様子を伝える展示は、企業や産業が成長し続けるために、より一層大事になっていくと唐澤氏は指摘する。「どんな大企業も最初はスタートアップでした。歴史ある企業が、新たな事業領域に挑戦するなら、未来を見るだけではなく創業時に立ち返ることで自分達らしい新たなイノベーションの起こし方に気づけるはずです。創業時どのようなスピード感、熱量で事業が生まれていったのか、その挑戦の歴史を発信、共有することは、社内に起業家精神を醸成することにもなります。また同様のマインドを持つ求職者を集めやすくなりますし、共創相手となるスタートアップ企業からの共感も得やすくなるのです」。

人的資本の「見える化」に

『広報会議』2023年4月号の特集で、企業ミュージアム20館の設立目的を調査したところ、対内的な目的としては「創業の精神、企業理念の伝承」「技術、歴史、企業文化の理解促進」「将来の方向性への共感」「イノベーションの場づくり」などが挙げられており、ミュージアム見学が社員研修や、社内イベントに組み込まれていた。

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