三軒茶屋の書店で味わう「自分とチューニングを合わせる時間」/twililight

三軒茶屋駅から歩くこと約5分。3階建てのビルの階段を上った先に、その本屋はある。「階段を上がるごとに日常から少しずつ離陸していくイメージがあって。ほっと一息つける時間を提供したいと思っています」と話すのは、2022年に開店した「twililight(トワイライライト)」店主の熊谷充紘さんだ。店舗では本の販売のほか、カフェ、ギャラリー、イベントを展開している。アイデアの宝庫である書店で働く人々の視点から、その店ならではの特徴やこだわりを紹介する本連載。新たな書店の楽しみ方を提案する。

twililight 店主の熊谷充紘さん。

店名には、余計なものこそが人を豊かにしているという思いをのせた

―twililightを立ち上げるに至った経緯は。

2022年3月の開店までは、10年ほどフリーランスとして主に編集や企画を行っていました。トークイベントやライブを企画する中で、元々ファンだった翻訳家の柴田元幸さんに出会い、柴田さんが責任編集を務める文芸誌『MONKEY』(スイッチパブリッシング)の創刊後は、刊行記念朗読会を日本各地で企画したりしていました。

しかし、新型コロナウイルスの流行があり、企画していたイベントがほとんどできなくなりました。柴田さんが翻訳している作家のバリー・ユアグロー氏が、ロックダウン下で日々綴った寓話の書籍化を提案してもらうなど、出版業を始めてはいましたが、書店を開こうとは思っていませんでした。

そんな中、このテナントの一つ下にあるカフェのオーナーが元々友人で、「3階の物件が空いたから何かやらないか」と2021年の年末に声をかけてくれたので、物件を見に行ったんです。

見に行くと、茶沢通りに面した大きな窓や、屋上に上がる階段が店内にあり、ここだったら何か面白いことができるかもと思い、自分が好きなカフェと本屋、そしてギャラリーを組み合わせてみようと思って始めたのが「twililight」です。

購入した本を読むこともできる喫茶スペース。

―店名(twililight)の由来を教えてください。

黄昏(=twilight)の時間が好きなんです。でもそのまま店名にするにはかっこよすぎるし、恐れ多いなと思う部分があって。

黄昏時って、1日の中で1番美しい時間で、空をぼんやり眺めていると自分がちっぽけになってもう何もいらないなと思う反面、心が落ち着くからか、段々とやりたいことが思い浮かんでくることもあると思うんです。

そういった人間の愚かさや愛おしさとか、今この時に新しいお店を始めるのは自然にとっても生きていく上でも余計なことなんだけれど、その余計なことがあるから人はホッとしたり、少し力が湧いてくる。そんなことを店名に込めたいなと思っていました。

また、失敗を恐れて何もできなかったり、成功にこだわってしまったりする部分が人間にはあるなとも思っていて。間違えてもいいんだという意味を店名に込めたいと思って世田谷線に乗っていたら、小さな子どもが三軒茶屋を「さんじゃんじゃや」と言っているのが聞こえたんです。

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