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24歳の「スープストックさん」には、自ら語れる言葉があるはず 「離乳食炎上」声明文の舞台裏(前篇)

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写真右から、スープストックトーキョー代表取締役社長の松尾真継氏と同社顧問の工藤萌氏。

スープストックトーキョーは4月、一部店舗で提供していた離乳食後期の無償サービスを全店で展開することをTwitterで発表。このツイートが拡散するに従ってさまざまな意見が加わり、批判的な意見が注目を浴び「炎上」状態となった。同社はサービスが開始した4月25日を待って公式サイト上で、スープストックトーキョー一同名義で声明を発表。企業の思いを誠実に伝え、共感を集めることに成功した。近年、企業SNSの炎上事件が目立つ中、同社はいかにしてこの難局を乗り越えたのか。

今回の一連の対応に際しては、スープストックトーキョー代表取締役社長の松尾真継氏が広報部と連携しながら、陣頭指揮を執ったという。さらに松尾氏をサポートしていたのが、スープストックトーキョーのブランド戦略に顧問として携わる工藤萌氏。両氏に、今回の一連の出来事から感じたブランド戦略の在り方について話を聞いた。

「このまま黙ってなんて、いられない!」

――離乳食の無償サービス発表後のネットでの炎上について、「何もしない」という選択肢もあったと思います。あえて、企業としての声明を出すに至った経緯を教えてください。

松尾:まずは「黙ったままではいられない」という気持ちが僕のなかにありました。だけど意見の出し方については慎重であるべきということも理解していました。工藤さんに相談しながら声明を出すタイミングを検討していました。

声明を発表するとしたら、タイミングは2回。ひとつが炎上中、もうひとつは離乳食後期の無償サービスが開始した4月25日以降でした。

炎上中に何を言っても素直な気持ちで読んでもらえないし、切り取られて取り上げられる懸念もありました。すでに、メディアからの取材依頼が殺到していたのですが、どの依頼状を見ても「ひとり女性の居場所を奪ったことについてどう思うか」といった趣旨のことが書かれていて…。この状況では、どれだけ真摯に話をしたところで、想定されている文脈に沿う形の記事になってしまうと考え、炎上している最中には一切、発信をしないことに決めました。

サービスを開始する発表を4月18日にTwitterで投稿したのですが、その日の夜から炎上状態になっていました。サービスそのものが開始されてもいないのに、何かを言うべきではないと思ったことも、炎上中に発信をしないと決めた理由のひとつでした。

例えば、サービスの開始初日に店舗にベビーカーの行列で混乱がおきたり、無料を目当てにしたお客さまが殺到して、他のお客さまにご迷惑をおかけしてしまうような状況があれば、また対応も変わったかもしれません。しかし、実際には店舗でそんな風景は一切見られませんでした。

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声明文に込めた想いは「理念をきちんと知ってもらいたい」と「抱きしめたい」

――声明文は松尾さんが書かれたのですか。

松尾:サービス開始後には、声明を発表すると決めていたので、自分で書き始めることに。

確か、23日か24日くらいにA4で6枚くらいの文章を書いて、工藤さんにも見てもらったのですが「長い!」と(笑)。

あと、「もっと率直に思いを書いた方が伝わる」とも言われ、6枚近い原稿を短くするためにまずは何を残すべきかを考え、骨子をつくりました。

 
――どんな思いを持って6枚の原稿をまとめ直したのでしょうか。

今回炎上したツイートは3200万ビューで18日にはTwitterトレンドで1位になるほど。スープストックトーキョーのアカウントのフォロワーは3万人なのに、結果としてすごい数の人に届いたわけです。

でもコメントの数は数十万もなかったので、ほとんどは見にきただけの人。もしかしたら、スープストックトーキョーに初めて触れた方もいるかもしれない。それならば、そうした人たちに少しでもスープストックトーキョーを正しく知ってもらう機会にすべきではないかと考えました。

それでメモには「理念をきちんと知ってもらいたい」と書きました。あとは「抱きしめたい」、当社の理念である「世の中の体温をあげる」、ちょっと勝手な思いとして「世の中の広報のお手本となるような文章を書きたい」を骨子としました。加えて、既存のお客さまに対して「お騒がせしていますけど安心して来てくださいね」というメッセージも届けたかった。

もともと6枚だったときはいろんな層に向けてメッセージを書いていたのですが、骨子をまとめているうちに伝えたいことは、シンプルにしても通じることに気づきましたた。広報からは「ちゃんと各層の方それぞれにメッセージを書いて」と言われたのだけど、「どなたでも全員、スープストックトーキョーに来てください」という言葉で伝わると思ったので、その提案は断りました。

この書き直しの過程では、工藤さんに何度もダメ出しをされて…。でも、本当にブランドのことを一緒になって真剣に考えてくれているのだと感じました。結果的に短くまとめ直したメッセージは広報にも確認してもらって、公開しました。

 
――工藤さんと松尾さんは、出会ってまだ1年未満ですよね。

工藤:昨年末に宣伝会議が主催する「CMO X」のYear-end Networking dayに参加をして、そこで松尾さんと席が隣になってご縁が始まって、スープストックトーキョーのコミュニケーションにも顧問としてかかわらせてもらうことになりました。

松尾:いつも工藤さんの指摘は的を得ていて、本当に信頼しています。今回の件も工藤さんのサポートがあって、できたことだと思います。

工藤:前々職時代、仕事が忙しかった時に、夜のオフィスで食べるスープストックトーキョーのスープが癒しになっていて…。そんな思い入れのあるブランドだったので、私もかかわれることができて嬉しいです。

 
――工藤さんは、スープストックトーキョーというブランドをどのように見ていましたか。

工藤:ブランドが成長していくためには、コンセプトも重要ですが、成長のための設計がいかに精度高くなされているかがより重要だと思っています。スープストックトーキョーはそれを体現できているブランドなので、今回のような行動も反射神経でできたのだと思います。ブランドがきちんと人格を持っているな、と思います。

後篇に続く

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