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レノボCMOに聞く 競争が激化するテクノロジー業界のマーケティング戦略

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世界180の市場を対象にビジネスを展開するレノボ。競争が激化するテクノロジー業界において、市場での競争力を維持するために同社が展開するグローバルなマーケティング戦略とは。同社のCMOでPC およびスマートデバイス (PCSD) 部門とモバイル事業グループ (MBG) から成るグローバル事業を担う、Emily Ketchen氏に話を聞いた(本取材は2023年9月に実施したものです)。

レノボCMO
Emily Ketchen氏

 

PCメーカーから、ITソリューション全体を牽引する存在を目指す

—グローバルな市場におけるマーケティング戦略において最も重視すべきことは何でしょうか。

レノボは世界180の市場で製品とサービスを提供し、ハードウェア、PC、タブレット、デバイスなど数々のテクノロジー技術を牽引してきました。グローバル市場におけるマーケティング戦略として、私たちが重視しているのは、まずはお客さまに私たちのビジネストランスフォーメーションについて知ってもらうことです。

日本の皆さんは、「レノボ」というブランド名を聞いて、どのようなイメージを抱くでしょうか。PCを思い浮かべる方が多いと思いますが、私たちは2019年より「Smarter technology for all」のスローガンを掲げ、お客さまの生活をテクノロジーでより豊かにするビジネスを展開。PCメーカーではなく、あらゆるソリューションサービスを展開するテクノロジー企業へとトランスフォーメーションしているのです。

こうした背景を伝え、私たちが提供できる価値を明確にしたうえで、具体的には次の3つのマーケティング戦略を実行しています。

まずはプレミアムなプロダクトの価値を伝える戦略です。私たちレノボはPCメーカーではなく、IT事業体へと変革を遂げています。とはいえ高い技術力に基づく、プロダクトの価値は私たちがお客さまに提供できる重要な価値のひとつであることに変わりはありません。

2つ目が、拡充していくソリューションサービスの価値訴求の戦略です。そして、最後の3つ目の戦略がDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進。前述のプロダクト、ソリューションそれぞれのマーケティング戦略の基盤となるのがDXだからです。DXの基盤を整えることで、ROIの最大化、データ駆動の意思決定、クリエイティブなアプローチを通じてカスタマーエクスペリエンス向上に注力していきたいと考えています。

 

顧客中心のイノベーションアプローチ

—異なる地域や文化に対応して、マーケティング戦略をどうローカライズしているのでしょうか。

レノボは「Smarter technology for all」というグローバルで共通のビジョンを掲げながらも、地域ごとの文化やニーズに合わせてマーケティング戦略をカスタマイズすることを重視しています。具体的には各国のオフィスのマネジメントにおいては、グローバライズするだけではなく、ローカルのユニークネスや多様性を尊重することに配慮しながら、地域に特化した活動やイノベーションを行っています。

例えば、日本はレノボにとってグローバルで見た際に3番目の売上規模を誇るマーケットです。その日本における、私たちのマーケティング活動を紹介すると、グローバルにおけるブランド力を保ちながらも、各地域のお客さまのニーズに最大限に応えるという目的においてはローカライズを実践する当社の戦略が理解いただけると思います。

レノボでは、2022年よりモータースポーツの最高峰であるフォーミュラ1とのパートナーシップ契約を締結しました。この提携により、レノボはグローバルな認知度を高め、業界をリードするハードウェア技術を統合していきます。こうしたグローバルにおける戦略の中で、レノボ・ジャパンでは今年の9月に「フォーミュラ1日本グランプリ2023」の タイトルスポンサーとして東京・渋谷にて、レーシングシミュレーターを使用したタイムアタックイベントを開催しました。

グローバルイベントだけではなく、日本仕様のイベントを実施している背景には、テクノロジーの恩恵を全ての人に提供することを目的に事業活動を推進するという理念「Smarter technology for all」があります。ゲームを始めとしたエンターテイメント文化が根付く日本で、ゲームを通じて年齢や性別、障がいの有無、各々のバックグラウンドに関わらず、すべての人にテクノロジーの力でF1を身近に感じてもらいたいという思いがありました。

今回のイベントではバーチャルサーキットを疾走できる、プロが実際に使用するレーシングシミュレーターが会場に登場。レーシングシミュレーターを通して、鈴鹿サーキットのチームピット直上のプレミアム観戦ルーム「パドッククラブ」をかけた「タイムアタックチャレンジ」を実施しました。自分たちの考えに合った価値観を持つイベントを見つけること、またそのイベントへの協賛を通じて、各国の風土に合ったレノボのコミュニケーションが実現しうると考えています。

レーシングシミュレーターを使用したタイムアタックイベントの様子。
レーシングシミュレーターを使用したタイムアタックイベントの様子。

 

顧客の行動変容を把握し、各個人の特性やニーズを理解する

—今後のマーケティング戦略を立案する際に重要視しているトピックとは。

レノボは顧客中心のイノベーションアプローチを採用しており、顧客の期待を超える製品の開発からマーケティングコミュニケーションの企画に至るまで、お客さまの声に耳を傾けています。近年では、よりパーソナライズされたソリューションを求める顧客インサイトが増加していると感じています。AIやビッグデータなどのスマートテクノロジーを駆使し、顧客の多様なニーズに応えるための努力を惜しまない姿勢こそが、レノボのブランドを確立しています。

具体的なコミュニケーション戦術に落とし込む際には、各国の事情に合わせたカスタマイゼーションが必要です。一方で世界のマーケットを見てみると、人々のインサイトには共通する面も多くあります。こうしたグローバルで共通するインサイトを発見し、そのインサイトをもとにした新たなソリューションの開発を通じて、ブランドと生活者の距離を縮めていきたいと考えます。

例えば、私たちレノボが2021年9月に10か国15,000人以上を対象に行った働き方に関する調査では、「どこからでも仕事ができるのであれば、地域コミュニティへ恩返しをしたり、社会へポジティブな影響を残したりすることが非常に重要だ」と61%の人が回答しています。これをもとに南米チリのロビンソン・クルーソー島でテレワークをしながら社会貢献活動にも取り組む「Work for Humankind」というプロジェクトが生まれました。

Work for Humankindの様子
南米チリのロビンソン・クルーソー島で行われた「Work for Humankind」。

顧客の行動変容を把握するには、さまざまなデータを組み合わせることが不可欠です。これらのデータを元に、各個人の特性やニーズを理解できるようになると、マーケティングにおけるクリエイティブやコンテンツの内容をよりパーソナライズできるようになります。そして、マーケティングにおけるパーソナライゼーションの取り組みのように、個々の違いや特性を尊重しながら、社会や組織の一部として誰もが参加できるインクルーシブな環境への取り組みが、将来の競争力維持と成長の鍵となると考えています。

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