私が民間企業のマーケティング職から転身し、4月から赴任している茨城県の下妻一高は県西地区の文武両道の進学校として、独自のポジショニングを取りながら学校運営を行っています。高校3年生は大学入試に向けて受験勉強に励む一方で、3年生が引退した新チームとなった部活動も全国大会出場など、素晴らしい成果が出ています。
11月に行われた、全国高校選手権(ウィンターカップ女子バスケットボール部)優勝、吹奏楽部の全国大会出場と、下妻一高の躍進が止まりません。さらに演劇部、放送部の関東大会出場と、様々な部活動で、輝かしい実績をのこしてくれています。まさに文武両道を実現する学校です。
私も本校の強みを理解し、取るべき“ポジショニング”がなんとなく分かってきました。前職での経験を活かし、学校運営にもマーケティングの発想を取り入れたい。まずはマーケティングのフレームワークの中でも、ポジショニングをどう取り入れるかが鍵だと考えています。
茨城県の県西地区という“市場”においては、下妻一高は文武両道という特長によって、私立の高校と比較しても独自のポジショニングが確立できるとはず。しかし、部活動は輝かしい成果を残してはいるのですが、受験に向けた指導も強化せざるを得ず、平日の練習時間など活動が制限される方向にあります。
しかし、民間企業で仕事をする中で、いま産業界に必要なのは「勉強ができるけれど、社会では活躍できない人」ではないことを、痛感しています。だからこそ、自分は教育界に転身する決意をしたのです。だからこそ受験勉強だけでなく、社会で必要な能力をも高校時代に身につけて欲しい、そんな教育を目指しています。まさに学力と人間力が両輪する教育です。
私も高校時代、野球部に所属していましたので、改めてこの立場になって、高校時代における教育について考えさせられました。
認知能力と非認知能力を養うための「妻一エコシステム」
人間の能力には「認知能力」と「非認知能力」があります。「認知能力」とは一般的には学力テストなど知能検査で測定できる能力のことを言い、「非認知能力」とは主に意欲、自信、忍耐、自立、自制、協調、共感などの私たちの心の部分である能力のことだと言われています。社会に出ると、特に非認知能力が高い人が企業内で出世していたり、活躍しているように感じられます。
「社会で活躍できる人材を育てたい」とは、具体的にはこの「認知能力」と「非認知能力」のどちらもバランスよく身につける教育を行っていきたいと考えているのです。本校では、この「認知能力」を高める為には、深い学びを実現する55分授業制や、国公立大学合格者数が100名を超える実績を出す教育課程に加え、先生方の個別指導で素晴らしい進学実績を残しています。
一人ひとりにあった進学指導、まさに「パーソナライズ教育」を行っているのです。今までの先生方の教育指導が妻一の伝統となり、学校全体の誇りが「ブランド化」して受け継がれています。私はこの進学サイクルを、「妻一エコシステム」と名付けようかと思っています。それぐらい素晴らしい仕組みがすでにできあがっているのです。
また「非認知能力」を身につけるための活動としては、学習と部活動との両立を積極的に推奨しています。生徒の部活動加入率も90%を超えています。
高校時代は何でも吸収できる感受性豊かな時期です。友達と一緒に目標に向かって取り組む経験を通して、目標の達成感や仲間との感動を味わうとともに、忍耐力や協調性などの人間力を磨いていける時期です。
私は、このVUCA時代を生き抜いて行くリーダーに必要な要素は、下記のスキルが必要だと実感しています。
そして、これからのリーダーとして必要なスキルを身につけるために、探究授業を学校全体で取り組んでいるのです。
探究授業とは、先生に指定された問題を解決するのではなく、自ら問いや課題を見つけ、情報収集や整理、他者との協同や議論を通して独自の答えを導き出すための学習方法です。まさに私の民間企業で経験したことを活かせる授業です。
先日、高校1年生の探究授業の発表会を行いました。1クラス1名の代表者が、半年間自分の興味を持ったことについて調べて発表するという内容です。みんなの前で自分の考えを伝え、意見交換をする。生徒にとっては初めての経験です。内容もこれからまだまだブラッシュアップが必要です。でもこの経験は社会に出たら非常に役に立ちます。
私は、この探究授業を深化させるための考え方として、アントレプレナーシップ教育を来年の柱にしていきたいと考えています。
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