※本記事は『販促会議』2025年3月号連載「ヒットの仕掛け人に聞く」への掲載内容から抜粋してお届けします。
ターゲットは、従来のジン製品よりも若い層
━━キリンでは、2024年8月に新ブランド「KIRIN Premium ジンソーダ 杜の香」を発売しています。
「KIRIN Premium ジンソーダ 杜の香」は、スッキリ甘くないお酒で心身ともにリフレッシュしたいというニーズに応えた商品です。従来の50代男性を主な客層である既存のジンRTDに対し、30代から40代も含めた幅広い層にも手に取っていただけるようにターゲットを設定しています。スッキリとした味わいと飲みやすさを重視し、ジンのお酒としての余韻を感じながらも甘くない設計で既存のチューハイとも差別化を図っています。
開発の背景にあるのは、家庭での飲酒ニーズと健康を意識しながらもおいしいお酒を楽しみたいという生活者の声です。コロナ禍が明けて外食需要は復活したものの、自宅でお酒を楽しむという方々もまだ多数いらっしゃると感じています。
さらに、コロナは健康志向の高まりも増長させましたよね。このような時代の流れやニーズを捉え、「スッキリ甘くなく、心身ともにリフレッシュできるお酒」という新しい価値観を市場に提案できればと考え、開発に至りました。
2024年8月に発売した「KIRIN Premium ジンソーダ 杜の香」。ジュニパーベリーを100%使用。ジンRTD市場の裾野を広げることを目指す。
競合の参入も目立つジン市場 なぜ今発売したのか
━━ジンRTDは競合他社でも販売されている印象があります。なぜ今、ジン市場に参入したのでしょうか。
たしかに、ジンRTDは市場の中でも盛り上がっているカテゴリだと言えます。そんな中で他社製品のイメージが強い人もいるかもしれません。
ですが、ジンRTD市場はまだ確立されたカテゴリだとは言い難いと考えています。これからさらに成長が見込まれる市場であると判断し、ジンに着眼しました。すでに知名度の高いブランドが市場にあるから出さないという考え方ではなく、他社製品とともに市場全体を活性化させられる可能性に価値を感じましたね。
例えば、缶ハイボールは各社から発売されています。新たな製品が発売されたとしても、違和感はないですよね。生活者にとっては選択肢も多くなり、自身の好みに応じた商品を選ぶことができます。これは缶ハイボール市場が活性化しているからこそ、起きていることだと思うのです。
これはきっとジン市場も同じ。市場が活性化してたくさんのブランドがお店の棚に並べば、生活者の選択肢の中にジンが自然と定着していくはずだと思います。ジンが飲酒文化に根付いていく土壌を育てるという意味でも、ジン市場に参入する意味は大きいと考えています。

