では、トランプ政権下で反DIEの動きが活発化する米国において、図書館によるダイバーシティを広める活動事例を紹介しました。
子ども向けのブックバトルの選書や、特定の内容の本を排除する「Book Ban」に対する対抗策としての「Little Free Library」などに触れましたが、後編ではちょっとユニークな図書館のイベントを紹介します。
図書館でスパイスを配り、異国のカルチャーを学ぶ仕掛け
その名は「スパイスクラブ」。オレゴンの隣町で開かれることが告知されていて、私も知りました。
図書館の来館者へ、スプーン大さじ1杯のスパイスと、そのレシピのキットが配られるというものでした(先着で)。
オハイオ州、ワシントン州など、さまざまな州の図書館で数年前から広まっているというこの取り組みは、キットを配るものもあれば、ポットラックでみんなでそのキットを使ってつくった料理を持ち寄るところまでやっている地域もあるようです。
なぜ、スパイスかというと、食事や料理の伝統を共有することは、その国のカルチャーや価値観、興味を知るに役立つだろうという考え方から。図書館にはその地域の料理の本も置いてありますし、それを借りていくきっかけにもなります。
意外にも、このスパイス配布はライブラリーと相性が良いようで、オレゴンでも広がりつつあるようです。
ちょうど近くの図書館に行った時に中を散策してみると、Native Americanのレシピ本の特設コーナーがありました。
私がポートランドに移住したばかりの頃、子どもたちと図書館へ行くと必ず、レシピ本を借りていたことを思い出しました。私が料理好きというのはもちろん選択の根底にはありますが、母国語ではない言葉で読みやすい本と言えば、こういう実用書になるのだろうと思います(言葉の理解が浅くてもわかりますから!)。
図書館の企画に話を戻すと、レシピ本とスパイス以外にも、たとえば、各国の伝統的なスポーツ(カポエラやムエタイ)の指南書と、体験会をセットで行うなんて企画も、「図書館」という枠組みにとらわれなければ考えられるかもしれません。

