それって「不自然な仕事」ではないですか? フジテレビ問題から考えるコンプライアンスと統治体制

フジテレビの問題を契機に、メディア企業の古い体質やコンプライアンスの不備が改めて問われている。番組制作における構造的な問題や属人的な労務管理、そして機能していない社外取締役制度。中央大学法科大学院教授で弁護士の野村修也氏は、業界全体の慣習を見直し、真に機能する統治体制と従業員によるリスクアセスメントの徹底こそが、改革の鍵になると語る。
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野村修也氏

中央大学法科大学院
教授
弁護士

「商法」「会社法」「金融法」が専門でなかでも「コーポレート・ガバナンス」「コンプライアンス」「規制改革」の研究で知られる。法制審議会や金融審議会等を通じて各種の立法に関与。消えた年金記録や福島原発事故などの調査委員を務める。

不祥事が起こる背景を考える

テレビメディアのビジネスが複雑なのは、番組という「商品」そのものを視聴者が直接購入しているわけではない点にあります。雑誌や新聞は情報の受け手が対価を支払っていますが、民放の場合はスポンサーがお金を出している。すなわち視聴率が価格を決め、番組の質以上に「視聴者にチャンネルを合わせてもらう」ことが重視される構造です。

この構造のもとでは、どの局がより注目を集めるキャスティングができるかが競争の焦点となり、そうした能力に秀でた人物が出世しやすくなります。その結果、過剰なサービスや時代遅れの成功体験にすがる風土が生まれ、今回のような不祥事の温床となってしまったのです。

メディア業界ではもうひとつの問題として、暗黙知や属人的な業務の多さが挙げられます。契約形態もバラバラで、24時間体制の現場では労働時間の管理も困難。こうした構造を放置すれば、トラブルが起きるのは時間の問題です。

重要なのは「社外取締役」の存在

とはいえこうした“膿”は、メディアに限った話ではありません。どこの会社も一歩引いてみれば極めて不自然な仕事が残っているものです。

この不自然さに、誰も気づいていないはずがありません。しかし従業員が自ら声を上げるのは難しいもの。だからこそ重要なのが「社外取締役」の存在です。

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