データ連携でリスナーを可視化 TOKYO FMとドコモが提供するラジオ広告の新サービス

エフエム東京(TOKYO FM)は、ラジオのネット配信アプリ「radiko(ラジコ)」の聴取者データを活用した新たなマーケティングサービスの提供を開始する。NTTドコモおよびドコモグループ各社との協業によるもので、広告に接触したリスナー属性の把握や広告効果の検証が可能になる。ターゲットリーチの精度や効果検証が課題とされていたラジオ広告にとって、新たな可能性を示すものになりそうだ。
 
聴取データと会員基盤データの連携により、ラジオリスナーの属性を可視化し、事前のプランニングから事後の効果検証を一貫して行うことができるサービスは国内初だという。このほど植物油メーカーの日清オイリオを広告主に実証実験を行った。
 
新たなサービスによってラジオ広告はどう変わるのか、エフエム東京の常盤一赳氏、インテージの伊藤里彩子氏、ドコモ・インサイトマーケティングの土橋央暉氏に聞いた。

ドコモとの協業でラジオ聴取者の可視化へ

エフエム東京は2024年10月にデジタルマーケティング会社のフラッグと合弁会社「ラジオDXアライアンス(RDA)」を設立し、DXの推進により広告主やリスナーに新たな価値を提供する取り組みを進めている。2025年にはNTTドコモとデータ連携の分野を中心に協業し、ラジオ広告の価値向上を目指した新たなマーケティングサービスの提供を始めたところだ。

こうした動きの背景には、デジタルシフトが進む広告業界におけるラジオ広告の課題がある。エフエム東京執行役員で、ラジオDXアライアンスの社長を務める常盤一赳氏は「誰が聞いているのかが見えにくいということが、ラジオの一番の課題としてありました。これを解消できれば広告主や広告会社がメディアプランニングするときの選択肢にラジオを入れやすくなり、プロモーションに活用してもらえるのではと考えました」と話す。

写真 人物 常盤一赳 氏

エフエム東京 執行役員 ビジネスソリューション局長 兼 ラジオDXアライアンス 代表取締役社長 常盤一赳 氏

ラジオ番組には熱心なファンを持つものが多く、番組発のリアルイベントには多くのリスナーが集まり一体感をつくり上げている例も少なくない。調査データからも、ラジオリスナーは情報や消費意識も高いことが裏付けられている。

こうした背景で始まったのが、エフエム東京が持つradikoの聴取者データと、ドコモが持つ「dポイントクラブ」会員基盤などのデータ(ドコモデータ)との連携による新たなラジオマーケティングサービスだ。ドコモデータを活用したマーケティングサポートを行う、インテージの伊藤里彩子氏は「dポイントクラブ会員は1億を超えるアカウントがあります。個人が特定されない形の位置情報やオフラインでの購買行動など、日々の活動のデータを取得して、クライアントの顧客の可視化を支援しています」とドコモデータの強みについて話す。

写真 人物 伊藤里彩子 氏

インテージ マーケティングソリューション本部 データアライアンス推進室 伊藤里彩子 氏

ターゲット層が多い時間帯をヒートマップ上に表示

このサービスでは、radikoの聴取者データとドコモデータを突合し、広告主のターゲットになりうるセグメントごとのヒートマップを作成し、聴取者の属性を可視化する。これによって出稿すべき番組や時間帯を判断できるようになる。出稿後は効果測定を行うことで、ラジオ広告の費用対効果を数値化することが可能だ。

図

広告主の業種やターゲット層に応じて適した出稿時間帯や番組を提案する

サービスの有用性を確かめるため、日清オイリオの協力を仰いで実証実験を実施。TOKYO FMの朝の番組「ONE MORNING」内の1コーナーで、ビジネスパーソン向けにヒットアイテムや企業の取り組みを紹介する「NEW TREND ONE」に協賛した。

このコーナーは、収録風景が動画でも撮影され、TOKYO FM YouTubeアカウントで配信し、タクシー内ディスプレイ「GROWTH」でも番宣が流れるパッケージの広告商品。日清オイリオは自社が紹介される動画への誘導施策としてラジオスポットを出稿。その時間帯をヒートマップをもとに決めた。

図

日清オイリオによる実証実験では、出稿前のプランニングと効果検証を実施した

日清オイリオがターゲットに設定したのは20〜30代の料理好き男性。ヒートマップが示したこの層が多く聴取している時間帯は平日の朝8時台で、この時間帯をメインにスポットCMを展開した。出稿後にはラジオ広告に接触したdポイントクラブ会員と非接触の会員を抽出し、ブランドリフト調査も実施した。その結果、広告接触者を非接触者と比較したところ、日清オイリオについて友人や知人、家族と話をした人が1.5倍、日清オイリオのWebサイトの検索率が1.3倍になるなどの成果が明らかになった。

図

聴取者にターゲット層が多く含まれる時間帯をヒートマップで表示

ターゲット層への仮説をデータで検証

今回の施策でドコモデータの活用支援を行うドコモ・インサイトマーケティングの土橋央暉氏は、「初めての取り組みだったので、どのようなデータが取得できるのかには私たちも興味がありました。結果としては、事後の検証でも実際のラジオ広告接触者はヒートマップを作成したターゲットに近いことが証明できたので、ドコモデータの有用性を対外的に示す結果が出ていたのではないかと感じています」と話す。

写真 人物 土橋央暉 氏

ドコモ・インサイトマーケティング データプラットフォーム戦略部 土橋央暉 氏

ターゲットの設定を、さまざまなセグメント項目の中で検証し、今回は、料理好きを基本にしたという。「このセグメントの広告接触者のデモグラフィック属性を見た時に、平均値より高くリフトが出ていたので、今回のターゲットに間違いがなかったことをデータによって可視化できたことは、私たちにとっても学びがありました」(伊藤氏)

ドコモデータの強みのひとつに、クライアントの仮説や要望に合わせたデータを抽出できることがある。そのため、施策の内容に合わせたターゲットセグメントを選定、提案を事前に行った上で施策を行い、検証結果をもとに次の施策へつなげていくことが可能だ。「ヒートマップで見えたターゲットセグメントと、効果検証で可視化した人物像をドコモデータの1IDで追跡できることも今回の実証実験で証明できたことだと考えています」(土橋氏)

ラジオメディアのアップデートの契機に

エフエム東京の常盤氏は新サービスについて「ラジオ放送は、今も、放送波経由で聴かれることが多いので、radikoのデータがラジオ聴取者の全体を表すわけではありません。ですが、今回の取り組みを契機に、ラジオ広告もデジタル広告と同じ指標でプランニングから検証までできることになれば、ラジオの良さである熱量の高さをより活かすことができるはず。広告プランニングにおいても、リーチはデジタルで、深さはラジオで獲得するという選択肢も考えられます。私たちは全国にネットワークがあるので全国規模でリーチを取ることもできます。それをヒートマップに基づいて最適な番組、時間帯への出稿で獲得できるということをサービスとして提案できれば、ラジオの価値を再証明できるのではないかと考えています」と話す。

今回の実証実験では日清オイリオの仮説に基づいて作成したヒートマップをもとに出稿プランを組み立てたが、もちろん媒体社であるラジオ局が主体となって番組聴取者の属性を軸に広告主や広告会社に番組出稿の提案を行うことも可能だ。

「ドコモデータはさまざまな軸で聴取者データと掛け合わせることができます。クライアントと一緒に番組企画をつくっていくケースなど、ラジオ局、広告主、広告会社などが広告コミュニケーションを検討するさまざまなフェーズに関わることが可能だと考えています」(土橋氏)

「効果検証の際も、アンケート調査では実際の行動と自認の間にズレが発生するケースがありますが、ドコモデータはアンケートデータだけでなく、ログをもとにしているので事実ベースのデータが取得できます。また必要であればインテージの機能を活用した調査も可能です。このように柔軟に対応できることも今回の取り組みのユニークなポイントになると思います」(伊藤氏)

エフエム東京、ラジオDXアライアンスとドコモの取り組みは、日清オイリオの実証実験以降さまざまな反響が寄せられているという。

「まずは多くの広告主にこうした取り組みを知っていただき、実績を積み重ねていきたい。それがラジオというメディアのイメージを変えていく端緒になると思っています。ドコモの皆さんや系列各局とも協力しながら、ラジオの未来をつくっていきたいと考えています」(常盤氏)

お問い合わせ

株式会社ラジオDXアライアンス

Webサイト:https://www.radiodx.co.jp/

advertimes_endmark

この記事の感想を
教えて下さい。
この記事の感想を教えて下さい。

この記事を読んだ方におススメの記事

    タイアップ