「どんなインプットをしていますか?」
これ、セミナー後の質疑応答やOB・OG訪問などでよく出る質問だと思うんですが、僕はそこにもやもやとした違和感を抱いてしまうのです。
なぜなら自分の周辺を見渡してみたとき、「いいものをつくる人=インプットにこだわっている人」では絶対にない、からです。むしろその人たちが摂取しているのは、M-1とか紅白とかNetflixの超目玉作品とかだったりする。
以前、とある学生の方々と話した時こと。ひとりの女子が実家のお母さんとのエピソードを、とても楽しげに語っていました。起きている出来事はどの家庭にでもあるような平凡なものでしたが、なぜか聞き入ってしまったのです。
ああ、この人はお母さんをこんなふうに見ているんだ、そこでそんなことを感じたんだ、へえそこが気になるのか、ずいぶん楽しそうにしゃべるなあ…という感じで。決してしゃべりがうまいというわけではないのに、彼女のアウトプットに魅了されっぱなしでした。
一方で、誰も経験したことのないようなニッチでエクストリームなエピソードを披露したにも関わらず、心にかすり傷ひとつつかない人もいたりして。旅先で現地部族に洞窟に閉じ込められた話は一風変わった経験談にとどまっていました。
インプットの内容より、そのインプットとどう向き合い、どう伝えるのかを知りたい!と思ってしまったのです。料理に例えるなら、仕入れる素材より、それをどう調理するか。そこに作り手の個性が見えてくるし、腕の見せどころなはず…。
誰ともかぶらない経験なんてきっと必要ないんです。平凡でありふれた暮らしの足元に、心に響くアウトプットの鉱脈が広がっているはずだから。
どうかみなさん、インプットを探し求めて徘徊するインプットゾンビにならないように、お気をつけください。僕もじゅうじゅう気をつけます。