猛暑は“外出控え”ひいては“旅行控え”を加速させかねないなか、東日本旅客鉄道(JR東日本)では2025年、ウェザーニューズとコラボし「気温」を旅の起点にした新たなプロモーション「避暑旅」を始動した。「避暑」という考え方を、2024年の実際の気温データとともに展開することで、夏の旅行先に関する提案につなげている。猛暑における人々への旅行の訴求について、東日本旅客鉄道 マーケティング本部の柴田信幸氏に話を聞いた。
※本記事は月刊『宣伝会議』9月号の巻頭特集「異常気象でどう変わる!? 商品企画とマーケティング」の転載記事です。
ここ数年の猛暑が生んだ、人々が「旅をためらう夏」
かつて夏は「旅行のハイシーズン」として、多くの人々が全国各地の観光地へ足を運んでいた。だが近年、40℃近い気温が当たり前となった日本の夏においては、「暑さが不安で旅行を控えたい」という声が目立つようになっている。
実際、旅行先での熱中症リスクや移動中の体調管理などへの不安が、旅そのもののハードルを高めつつある。このような社会的変化を受け、これまでと同様の旅行訴求では消費者に届きにくくなっている。
JR東日本では、暑さのせいで旅行に対して消極的になりがちな生活者心理を受け止めつつ、「それでは、どうすれば暑くても出かけたくなるか?」という観点からアプローチを再設計。その解のひとつとして打ち出されたのが、気温の低いエリアを軸に旅先を提案する「避暑旅」プロモーションだ。
JR東日本では2025年、ウェザーニューズとコラボし「気温」を旅の起点にした新たなプロモーション「避暑旅」をスタートした。
猛暑日が続くが、東日本エリアにも比較的涼しい避暑地が多くあることに着目。そこで同社は2025年夏、気象情報会社のウェザーニューズとタッグを組み、東日本各地に点在する涼しいエリアを「気温」という視点で旅先として紹介するキャンペーンを展開した。
各地の観光施設やモデルコースをあえて前面には出さず、「まずは気温を見て、興味を持ったら自分で調べたくなる」という能動的なユーザー体験を意識したWebサイト。
本プロモーションの最大の特徴は、「避暑地の気温」という定量的データを起点に、旅行先を選ぶ新たなスタイルを打ち出した点にある。
これまでの夏の旅行訴求では、観光素材や情緒的な写真・キャッチコピーを用いたイメージ重視のプロモーションが主流だったが、今回の施策では、2024年8月の平均最高気温をもとに、「東京が32.8℃の中、青森は23.4℃」といった具体的な気温をシンプルに示し、その差異自体を“価値”として提示した。
…この続きは8月1日発売の月刊『宣伝会議』9月号で読むことができます。
Amazonでの購入はこちら


