気象環境が大きく変わるなか、かつて「夏」の風物詩とされたアイテムやビジュアルなど、各種の販促施策が、消費者の心に届かなくなってきている。本稿ではTrue Data 流通気象コンサルタントの常盤勝美氏が、夏の気候特性を気象データからひもときながら、長期化し、変質した“新しい夏”において、企業がマーケティングやプロモーションを設計するうえで不可欠な視点と戦略を解説する。
※本記事は月刊『宣伝会議』9月号の巻頭特集「異常気象でどう変わる!? 商品企画とマーケティング」の転載記事です。
※本記事は月刊『宣伝会議』9月号の巻頭特集「異常気象でどう変わる!? 商品企画とマーケティング」の転載記事です。
自社製品と天候との関係を分析することから始めよう
2023年7月、国連のグテーレス事務総長が記者会見の場で、「地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰化の時代が到来した」と語りました。会見当時の地球全体の平均気温が、7月としては有史以来最高を記録する見通しであることを伝える場での発言でした。
【図表1】は気象庁が作成した、日本の年平均気温偏差の推移です。平年値は、30年間の平均気温から算出しており、このグラフでは1991 ~ 2020年のデータに基づく平年値を基準にしたプラスマイナスで示されています。
図を見ていただくとわかるように、2023年と2024年は明らかに、その前と比べて気温が大きく上昇しています。問題は、ここ最近2年の異常高温が一過性の現象ではなく、今後もこの程度の顕著な高温が続く可能性が高いと考えられているということです。
事実、今年2025年も、上半期の月間気温は2月の西日本、沖縄・奄美を除いて、平年並か高めでした。特に6月の日本の月平均気温は、統計開始以来最高記録を更新。6月の東京の真夏日日数も13日で過去最高です。
このままいけば、2025年の年間気温は、2024年をさらに上回る高温水準となる可能性も十分に考えられます。特に近年、高温の幅が顕著となっているシーズンは、夏季~初秋です。
