マーケターは、打率を気にせず打席に立ち続けよ

SMBCグループの銀行口座、カード決済、証券、保険などの機能を1つのアプリで完結させた総合金融サービス「Olive(オリーブ)」が好調です。日常づかいしやすいという特長がデジタルネイティブ世代を中心に支持され、2023年のサービス開始から約2年でアカウント数は500万を超えました。メガバンクの金融サービスとして異例のヒットとなった「Olive」。その後も、PayPayとの提携を実現するなど、キャッシュレス化をリードし続けるSMBCグループでは、どのようにして企画を生み出し、実現しているのでしょうか。三井住友カード執行役員マーケティング本部共同本部長・伊藤亮佑さんに、マスメディアンの荒川直哉が伺いました。

書くことで思考が整理されていく

━━2016年に前職の大手通信会社から三井住友銀行に転職されました。それまでとは真逆の企業文化に飛び込んだ印象ですが、実際はどうでしたか。

あくまで私がいたころの話ですが、在籍していた大手通信会社が意外とプレゼン文化だったのです。どんなにいい企画でも、資料が良くなかったら上司が通してくれない。1ページ目を開いただけで、「このグラフがわかりづらい」と、やり直しを求められたこともありました。

写真 人物 伊藤亮佑 氏

三井住友カード
執行役員 マーケティング本部 共同本部長
伊藤亮佑 氏
大学院で建築を学んだのち、大手EC会社に入社。ポータルサイトのディレクターを務める。4年後に大手通信キャリアに転職し、マーケティングコミュニケーション本部でユーザー向けWebサイトのサービス企画に従事。2016年、三井住友銀行入社、リテールIT戦略部配属。2018年より三井住友カードを兼務。2024年マーケティング本部本部長補佐に就任。2025年4月より現職。

━━それはなかなか厳しいですね。

当時は私もそう感じていました。でも、いま振り返ると、マーケターとしてすごく大事な訓練だったなと思います。どんなにいい内容でも、最初でつまずいたら、それ以上読み進めない。これって、消費者が情報に触れたときの行動そのものですから。上司に伝わらないものが、市場に投入した際に消費者に伝わるわけがないですよね。どう伝えたら製品・サービスを理解してもらえるか、表現に真剣に向き合うことはとても重要です。

それに、書くことは考えることなのです。書くことで思考が整理され、無理や矛盾の発見につながります。関係者のイメージを統一するのにも役立つ。最近は、資料づくりを無駄な作業とする風潮がありますが、私はマーケティングにおいては必要な工程だと思っています。

社長を交えたディスカッションも

━━伊藤さんといえば画期的な総合金融サービス「Olive」を立ち上げた方というイメージが強いですが、そのときはどんなふうに企画をまとめていったのですか?

構想を練り始めたのは2020年あたり。そのころはマイナス金利が続き、銀行はどこも、預金を集めること以外で収益化できるビジネスを考えなければなりませんでした。

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荒川 直哉(マスメディアン 取締役 国家資格キャリアコンサルタント)
荒川 直哉(マスメディアン 取締役 国家資格キャリアコンサルタント)

マーケティング・クリエイティブ職専門のキャリアコンサルタント。累計4000名を超える方の転職を支援する一方で、大手事業会社や広告会社、広告制作会社、IT企業、コンサル企業への採用コンサルティングを行う。転職希望者と採用企業の両方の動向を把握しているエキスパートとして、キャリアコンサルティング部門の責任者を務める。「転職者の親身になる」がモットー。

荒川 直哉(マスメディアン 取締役 国家資格キャリアコンサルタント)

マーケティング・クリエイティブ職専門のキャリアコンサルタント。累計4000名を超える方の転職を支援する一方で、大手事業会社や広告会社、広告制作会社、IT企業、コンサル企業への採用コンサルティングを行う。転職希望者と採用企業の両方の動向を把握しているエキスパートとして、キャリアコンサルティング部門の責任者を務める。「転職者の親身になる」がモットー。

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