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デジタル化や新しいメディアの登場によって、OOHは物理的ながら表現の自由度を増し、存在感を高めている。その中でも特に注目を集めるのが「アンビエント広告」だ。看板やサイネージといった“広告枠”
を超えて、都市の風景や生活者の行動に自然に入り込み、気づいたときには広告体験が完了している。今回は、アンビエント広告の新しいかたちを生み出してきた3人のクリエイターが集合。印象的な事例から制作の裏側、都市空間に溶け込む広告の魅力とその可能性について語ってもらった。
(左から)
カイブツ
アートディレクター
木谷友亮氏
東京・神楽坂に拠点を置くクリエイティブチーム「カイブツ」代表。引力あるビジュアルアイデアと、細部まで妥協を許さない作業が真骨頂。話題性あるアウトプットを続けている。
電通
dentsu zero
クリエイティブディレクター
コミュニケーションプランナー
加我俊介氏
ADKを経て、2012年電通入社。主な受賞歴は、第60回ACCフィルム部門総理大臣賞・グランプリ、SPIKESASIA金賞、One Show金賞、Epica金賞、TIAA金賞、Adfest銀賞、NYADC銀賞、文化庁メディア芸術祭など。
メディアコンシェルジュ
代表取締役
大谷昭徳氏
1974年東京都生まれ。2001年アンビエント広告会社メディアコンシェルジュ設立。でかいもの作りがち。看板に人吊りがち。媒体開発しがち。コルトン好き。海外国内広告賞グランプリや金賞いくつか。
そもそも「アンビエント広告ってなに?」
─本日は、OOH・アンビエント広告の領域で活躍される皆さんにお集まりいただきました。加我
:電通の加我です。Netflix『全裸監督』や『極悪女王』のキャンペーン、明治R-1の「受験生応援広告」などを手がけてきました。
Netflixシリーズ『全裸監督』シーズン2の広告展開。タイトルを伏せ、コピーだけで構成した広告はシーズン1で話題となったことから、そのフォーマットを踏襲した。
Netflixオリジナルドラマ『極悪女王』のプロモーションでは、渋谷エリアを中心に「悪態広告」を展開。渋谷センター街では店舗のシャッターを活用し、閉店後の深夜に「家に帰れ!」と悪態をつきながら帰宅を促す仕掛けを実施した。クリエイティブディレクターは加我氏、アートディレクターは木谷氏が務めた。
大谷
:加我さんが企画される事例、シンプルなのに強いなといつも感じています。私はNetflix『浅草キッド』の浅草プロモーションや、最近だとゲームアプリのプロモーションで、渋谷にスフィンクス像を設置しました。これは木谷さんもご一緒しましたね。
2021年12月、SHIBUYA109前のZeroBase渋谷に、作品の舞台となった「浅草フランス座」の外観を再現。10m超の巨大な書割で描かれた。
木谷
:そうですね、スフィンクス像のアイデアは企画・デザインから関わりましたし、私もNetflix『極悪女王』『地面師たち』『幽☆遊☆白書』のOOHなどのアートディレクションを担当してきました。
2025年6月、2Kの新作スマートフォンゲーム『シヴィライゼーション:時代と盟友』のプロモーション施策として、渋谷に高さ約4メートルの巨大スフィンクス像が出現。足元のアラビア語看板には「拡散せよ」と記され、SNSでも話題を集めた。隣接するZeroBase渋谷には前日からクレオパトラのビジュアル広告を掲出し、翌日にスフィンクスを登場させる二段構えの仕掛けに。日中はスフィンクスに登って撮影が可能で、夜間にはライトアップによる幻想的な光景が演出された。
Netflixシリーズ『幽☆遊☆白書』の公開に合わせ、渋谷・井の頭通りに突如現れたのは、浦飯幽助と戸愚呂弟の死闘を再現した巨大なOOH。向かい合う2棟のビル壁面に両者を描き、サーチライトで幽助の必殺技「霊丸」を放つ演出を実現。毎日16時半から24時に光が走り、街ゆく人々を驚かせ、SNSでも大きな話題となった。
加我
:今回の座談会のテーマは“アンビエント広告の現在地” ということですが、そもそも「アンビエント広告ってなに?」というのが最初に議論すべきポイントですよね。
大谷
:そうですね。これまでもアンビエント広告を手がけてきましたが、私は、一言でいえば「広告っぽく見えない広告」だと思っています。ambient=「周囲の」「環境の」という言葉の意味の通り、環境に溶け込みながら、いつの間にか広告だったと気づく存在というか。
木谷
:たしかに、その説明はしっくりきますね。







