生成AIの台頭により、業務の効率化が実現すると共に、メディアの在り方や、企業と人の接点のつくり方をも変えるような大きなインパクトが予測されます。マーケターは、これらの技術をどのように受け入れ、業務に活かしていけばよいのでしょうか。今回は、データ収集の枠組みの変化について、富士通の山根宏彰氏が解説します。
※本記事は月刊『宣伝会議』11月号の連載「AI×マーケティングで未来を拓く」に掲載されています。
※本記事は月刊『宣伝会議』11月号の連載「AI×マーケティングで未来を拓く」に掲載されています。
責任ある活用に向けて進む、データ収集を巡る3つの変化
インターネット上の無料サービスは、ユーザーがサービスを無償で使い、企業が行動データを収集して広告最適化やプロダクト改善に活用する、という単純な仕組みでこれまでは成り立ってきた。この「データと利便性の交換」こそが、現代デジタルマーケティングおよび経済の基盤となっていた。
しかしその前提が昨今の大きなパラダイムシフトによって、揺らいできている。「法規制の厳格化」、「ブラウザ・OS側での追跡制限」、そして「巨大テック企業に対するより公平性を維持するための競争法適用」という3つの“地殻変動”が同時に進行し、企業のデータ収集能力に制約をかけているからだ。
ここで起こる大きなうねりは、単純に無料モデルが終わるかどうかという話ではないはずだ。「何でも無制限に収集できた時代」が終わり、これからの無料サービスは、より透明で責任あるデータ活用によって成立させる必要がある。その転換点で企業が直面している課題と、新しい設計原則を整理していきたい。
第一の変化は法規制による「同意」の再定義
もっとも大きな変化は、ユーザーの同意に対する法的要件の厳格化である。EUの一般データ保護規則(GDPR)とeプライバシー指令(通称「クッキー法」)は、マーケティング目的でのデータ収集には事前の明示的同意(opt-in)を求める枠組みを確立した。読者の皆さんも、インターネット上でのブラウジングの際に、個人情報の提供について何度も問い合わせを受けた経験をお持ちではないだろうか?