「商品を売るだけじゃない、季節を感じてもらう役割」を小売業が担う
春と秋が短く、夏と冬が長く感じられる。さらには猛暑や豪雨など、異常気象と呼ばれる現象も多く発生し、天気の状況がますます読めなくなってきた。それにより、52週MDを軸に販促計画を組み立ててきた担当者の間では、「気象が販促企画の“味方”として機能しなくなっている」という声も聞かれる。しかし、異常気象時代において「季節を切り口にした販促」は本当に通用しなくなったのだろうか。今回は、販促支援会社スコープの多田氏、イトーヨーカ堂の太田氏、そしてTrue Dataで流通気象コンサルタントを担当する常盤氏の3名が集い、“異常気象時代の販促”を議論した。
編集協力:スコープ
52週販促は通用しない? 必要なのは暦ベースからの脱却
━━季節を切り口にした売り場企画や販促が成果に結びつかなくなったとの声を聞くことが増えました。同じような実感はありますか?
多田
:販促業界では、販促計画を立てるうえで「52週販促」という考え方が定着していますが、異常気象の影響で実際にはカレンダー通りに季節が動かなくなっているのは周知の事実です。要は販促においても、これまでと同じように企画していては、通用しなくなってきた感覚はありますね。
太田
:小売の現場でも同じ課題感です。例えば、数年前までは「夏はこれを売って、このタイミングで秋商品に切り替えよう」という計画が暦をベースにできていましたが、5月からも暑いし10月までも暑いとなると、従来のように暦通りで販促を企画することは難しくなってきています。つまり、カレンダー通りに販促計画を設計し続けると、“暑さ”や“涼しさ”といった生活者の体感と売り場に温度差が生まれてしまいます。
多田
:そういう事実を加味すると、販促計画は、「暦」よりも「体感温度」を基準にした新しい設計が求められているのかもしれません。
秋なのにいきなり寒かったり、その反対にとても暑かったり……。日によって気温の高低差が大きくなるのは、この数年で特に顕著な気がします。毎日の気温に合わせて売り場も変えることができれば理想ですが、そういうわけにもいきません。季節を改めて捉え直すことが必要になっているのかもしれませんね。