日本エンタメが示す「マーケティング資産化」の条件 音楽・アニメ・観光・スポーツ・食文化などの共鳴圏から考える文化経済の未来

娯楽を超えた日本文化コンテンツ 「感情資産」として存在

日本の文化コンテンツ産業は、単なる娯楽を超えて、いまや国や地域の「感情資産(emotional asset)」(ポジティブな記憶)を形成する存在になっている。この連載で辿ってきたアニメ、音楽、ゲーム、映画、スポーツ、さらには食文化まで――。そのどれもが「個人の記憶」と「社会の物語」を結びつける回路として機能している。

近年、海外市場でも注目されているのは、こうした日本的コンテンツが「消費される文化」ではなく、「共有される文化」として再定義されつつある点だ。SNSやストリーミングが浸透したことで、作品は単体で完結せず、ファン同士の語りや「巡礼(聖地訪問)」などを通じて新たな価値を生み出している。

それは、マーケティングの言葉で言えば「共創型ブランド(co-creation brand)」であり、コンテンツが「場」として機能する段階に達しているということだ。このような状況を「文化資本の資産化」と呼ぶならば、日本エンタメは世界のなかでも最も成功した例のひとつである。コラムの第1回から第5回までで取り上げてきた事例に共通するのは、「共感を媒介にした価値の持続性」であった。

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増淵 敏之
増淵 敏之

法政大学文学部地理学科教授、専門は文化地理学。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了、学術博士。コンテンツツーリズム学会会長、文化経済学会〈日本〉特別理事、希望郷いわて文化大使、岩手県文化芸術振興審議会委員、NPO氷室冴子青春文学賞特別顧問など公職多数。

増淵 敏之

法政大学文学部地理学科教授、専門は文化地理学。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了、学術博士。コンテンツツーリズム学会会長、文化経済学会〈日本〉特別理事、希望郷いわて文化大使、岩手県文化芸術振興審議会委員、NPO氷室冴子青春文学賞特別顧問など公職多数。

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