娯楽を超えた日本文化コンテンツ 「感情資産」として存在
日本の文化コンテンツ産業は、単なる娯楽を超えて、いまや国や地域の「感情資産(emotional asset)」(ポジティブな記憶)を形成する存在になっている。この連載で辿ってきたアニメ、音楽、ゲーム、映画、スポーツ、さらには食文化まで――。そのどれもが「個人の記憶」と「社会の物語」を結びつける回路として機能している。
近年、海外市場でも注目されているのは、こうした日本的コンテンツが「消費される文化」ではなく、「共有される文化」として再定義されつつある点だ。SNSやストリーミングが浸透したことで、作品は単体で完結せず、ファン同士の語りや「巡礼(聖地訪問)」などを通じて新たな価値を生み出している。
それは、マーケティングの言葉で言えば「共創型ブランド(co-creation brand)」であり、コンテンツが「場」として機能する段階に達しているということだ。このような状況を「文化資本の資産化」と呼ぶならば、日本エンタメは世界のなかでも最も成功した例のひとつである。コラムの第1回から第5回までで取り上げてきた事例に共通するのは、「共感を媒介にした価値の持続性」であった。