日本のIPホルダーが単なる“コンテンツ提供者”にならないためには?
前回は、日本発のIPコンテンツが世界中に拡散されるきっかけとなった「配信プラットフォーム」の一方での脅威について、Netflixを例に解説した。単なるコンテンツ集約の「場」という役割を越え、①自社オリジナルコンテンツの創出(企業の範囲拡張)、②最適なレコメンドアルゴリズムの独自開発(製品化技術の開発)、③独自開発した製品化技術をコンテンツ・プロバイダーに開示しない(外部との関係)、④これら①~③を実現できる内部組織の強さによって、結果的にコンテンツ供給のエコシステム全体を支配する可能性を示唆した。これをコンテンツプラットフォームにおける「統合型リーダーシップ」と評価したのが第3回の内容だった。
関連記事
たしかに、グローバルな配信プラットフォームの台頭は、現在のアニメ人気を世界規模に拡大させた強力なエンジンであることは間違いない。
しかしその一方で、「統合型リーダーシップ」によるコンテンツ配信の支配構造は、日本のIPホルダーが単なる「交渉力を奪われたコンテンツ提供者(補完事業者)」の立場に留まるリスクも示している。では、日本のIPホルダーがただの「コンテンツ提供者(補完事業者)」にならないためには何が必要なのか。
まず、配信プラットフォームの支配から抜け出し、IPホルダー側がCP=補完事業者という立ち位置から脱出するためには、自らがIPを核としたプラットフォームを構築し、配信事業者にそこに「参加させる」ポジションに就く必要があると考える。
実際、日本のIPには、そもそもそれを実現できる力がある。かつてビル・ゲイツが「Content is King」と語ったように、日本のコンテンツそのものも、世界で戦える“ポテンシャルがあることが配信サービスでの好調な視聴状況からも証明されているからだ。
実は、これまで日本のアニメ産業を支えてきた「製作委員会方式」も、出版社・アニメスタジオ・音楽レーベル・広告代理店・ゲーム会社などが協力し合う、日本独自の“B2Bプラットフォーム” と捉えることができる。つまり、複数の企業がIPというプラットフォームに参加し、それぞれが得意とする領域で事業を展開し、メディアミックス(IP展開)という日本独自の強みを発揮させるための仕組みになっているのだ。