「カネボウ」に何が起きたのか?
老舗企業の「カネボウ」が、製品のリコール対応に関連して、風評に揺れている。筆者は、7月4日に自主回収の発表を聞いたとき、2つのことをすぐ思い浮かべた。1つ目はカネボウの回収行為には「誠実さ」はあるのか、そして2つ目は老舗ブランドとしてふさわしいステークホルダー対応ができるのか、であり、「隠蔽」や「稚拙な対応」の結果、かつての「スノーブランドの崩壊」の再来があるのではないか、との危惧であった。
名門企業に期待されることは、単にその場かぎりの対応だけでなく、その歴史に恥ずかしくない「高潔さ」と「誰もが納得できる危機管理対応」である。その2つにおいて現時点で満足できる結果はまだ得られていない。現在も続く第三者(弁護士など)による調査結果を待つしかない。
「雪印事件」から学びとれなかった「カネボウ」
「カネボウ」に何が起きたのかを触れる前に、なぜ「雪印事件」や「スノーブランド崩壊」を思い浮かべたのかについて説明しておく。「雪印事件」は、21世紀の危機への警鐘として、2000年6月27日に発生した。
事件発覚後の稚拙な危機管理態勢は、記者会見の度に矛盾が噴出、新たな嘘を生み出した。21世紀の風評リスクの原点である「隠蔽」というキーワードの発現である。社長が「寝ていない!」と、数時間もの間、耐えに耐え抜いた記者会見後の一瞬の油断を突かれてコメントした言葉は、まさに消費者に向けて数秒で発信されるテレビのカット割として繰り返し放送され、ブランドは報道制作者側の期待通りに瞬く間に地に墜ちることになった。
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白井 邦芳(危機管理コンサルタント/社会情報大学院大学 教授)
白井 邦芳(危機管理コンサルタント/社会情報大学院大学 教授)
ゼウス・コンサルティング代表取締役社長(現職)。1981年、早稲田大学教育学部を卒業後、AIU保険会社に入社。数度の米国研修・滞在を経て、企業不祥事、役員訴訟、異物混入、情報漏えい、テロ等の危機管理コンサルティング、災害対策、事業継続支援に多数関わる。2003年AIGリスクコンサルティング首席コンサルタント、2008年AIGコーポレートソリューションズ常務執行役員。AIGグループのBCPオフィサー及びRapid Response Team(緊急事態対応チーム)の危機管理担当役員を経て現在に至る。これまでに手がけた事例は2700件以上にのぼる。文部科学省 独立行政法人科学技術振興機構 「安全安心」研究開発領域追跡評価委員(社会心理学及びリスクマネジメント分野主査:2011年)。事業構想大学院大学客員教授(2017年-2018年)。日本広報学会会員、一般社団法人GBL研究所会員、日本法科学技術学会会員、経営戦略研究所講師。
白井 邦芳(危機管理コンサルタント/社会情報大学院大学 教授)
ゼウス・コンサルティング代表取締役社長(現職)。1981年、早稲田大学教育学部を卒業後、AIU保険会社に入社。数度の米国研修・滞在を経て、企業不祥事、役員訴訟、異物混入、情報漏えい、テロ等の危機管理コンサルティング、災害対策、事業継続支援に多数関わる。2003年AIGリスクコンサルティング首席コンサルタント、2008年AIGコーポレートソリューションズ常務執行役員。AIGグループのBCPオフィサー及びRapid Response Team(緊急事態対応チーム)の危機管理担当役員を経て現在に至る。これまでに手がけた事例は2700件以上にのぼる。文部科学省 独立行政法人科学技術振興機構 「安全安心」研究開発領域追跡評価委員(社会心理学及びリスクマネジメント分野主査:2011年)。事業構想大学院大学客員教授(2017年-2018年)。日本広報学会会員、一般社団法人GBL研究所会員、日本法科学技術学会会員、経営戦略研究所講師。
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