株式会社宣伝会議は、月刊『宣伝会議』60周年を記念し、11月29日にマーケティングに特化した専門誌『100万社のマーケティング』を刊行しました。「デジタル時代の企業と消費者、そして社会の新しい関係づくりを考える」をコンセプトに、理論とケースの2つの柱で企業の規模に関わらず、取り入れられるマーケティング実践の方法論を紹介していく専門誌です。創刊号の記事の一部を、「アドタイ」でも紹介していきます。
詳しくは、本誌をご覧ください。
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西川英彦(法政大学 経営学部教授)
「ユーザー・イノベーション」とは、ユーザーが直面する課題に対して、自らの利用のために製品やサービスを創造や改良することである。ユーザーは、個人ユーザー(消費者)だけでなく、ユーザー企業の場合もある。
だが、こうしたイノベーションの捉え方は、実は新しい見方だ。そもそも何百年もの間、実務でも研究の世界においても、イノベーションはメーカーが行うのが当然だと信じられてきたからだ。つまり、イノベーションを生み出すのはメーカーであり、それを使用するのがユーザーという位置づけであったのだ。
作る者を意味する「メーカー」という言葉や、使う者を意味する「ユーザー」、あるいは消費する者を意味する「消費者」という言葉を見ても、それぞれの役割の前提を示していたと言えるだろう。
こうした中、70年代になって、MIT教授のエリック・フォン・ヒッペルによって、はじめてユーザー・イノベーションの存在が明らかにされた。この研究がきっかけとなり、その実態が明らかとなり、多様な研究に発展した。(注1)
※1 多様な研究は、エリック・フォン・ヒッペル『民主化するイノベーションの時代:メーカー主導から脱却』(ファーストプレス刊、2006年)を参照のこと。
埋もれた開発資源
彼を中心にした日本、米国、英国の3カ国の18歳以上を対象にした調査によると、イノベーションを起こした消費者、つまり消費者イノベーターの割合は、日本3.7%、米国5.2%、英国6.1%である。