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「ユーザー・イノベーション」とは、ユーザーが自らの利用のために製品やサービスを創造、改良すること。

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消費者が専門家に勝る時

それでは、素人である消費者が専門家より優れているのは、なぜだろうか。そのカギは多様性であると、ミシガン大学教授のスコット・ペイジは指摘する(注5)。

解決しようとする問題の最良解を山脈の山頂とすると、その分野の専門家たちは似たような問題の捉え方や解決法をもつため、同じような山頂を目指して登るという。

一方、多様な消費者(あるいは他の分野の専門家)は、異なった問題の捉え方や解決法をもつため、一見、その分野の専門家たちから見れば検討はずれな別の山を登るかもしれない。だが、その山が専門家の山頂より高い、つまり最良の解でありうる可能性があるのだ。

ペイジは、消費者が専門家より優れるためには、次の4条件が必要だという。

まず第1に、問題が難しいこと。例えば、微積分に関する数学問題の解は、数学の専門家に聞けばわかるだろう。多様な消費者では、答えられないかもしれない。だが、一度も解かれたことのないような難しい数学の問題であれば、これまでの数学の常識では解決できていないので、多様な集団が答えられる可能性をもつ。

第2の条件は、解決者が問題を解く能力をある程度持っていること。文系出身の人では、さすがに化学の問題を解くことは
難しい。すでに自ら解決した消費者イノベーターであれば、充分であろう。

第3の条件は、解決者は、多様であること。まさにカギであると説明した条件である。群衆の誰かが、最適解を出すことが
できる。多様な消費者の参加がイノベーションにとって重要となる。

最後の条件は、大きな集団から、ある程度の大きさのグループを選ぶこと。広く公開し、誰でも応募できる状況が重要である。インターネットが適しているのが分かるだろう。だが、人数の規模は明確に決まっている訳ではない。問題が難しければ多くの解決者が必要となり、多様性が大きければ集団は小さくても良いのだ。

企業の対応は、もはや不可避

本稿では、ユーザー・イノベーションについて見てきた。

今後、『ワイアード』編集長のクリス・アンダーソンが指摘するように、ユーザー・イノベーションは、消費者が自ら試作品を作れる3Dプリンターの普及で、さらに変化していく可能性をもつ(注6)。消費者は、料理のレシピを考えるように、自らのアイデアを簡単に製作できるからだ。

その製品データを仲間と共有すれば、簡単に再生産することができる。しかも、それらの製品は専門家の品質を上
回っている必要もなく、自分が好きであれば充分なのである。まさに、消費者がメーカーになるのだ。

絵空事のように思えるかもしれないが、技術は着実に進歩してきている。企業によるユーザー・イノベーションへの対応は、不可避となるだろう。

だが、一人の消費者の立場で考えれば、自らの能力を活かし企業や社会に貢献できる機会が増えることは、嬉しいことではないだろうか。企業が、ユーザー・イノベーションを理解し、多様な消費者のイノベーションを活用できる社会を創りあげることを期待する。

次ページ「CASE STUDY:ユーザー・イノベーションの実例」

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