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産地・銘柄を超えた、農作物のブランド化——小泉農園「わがままいちご」

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株式会社宣伝会議は、月刊『宣伝会議』60周年を記念し、2014年11月にマーケティングの専門誌『100万社のマーケティング』を刊行しました。「デジタル時代の企業と消費者、そして社会の新しい関係づくりを考える」をコンセプトに、理論とケースの2つの柱で企業の規模に関わらず、取り入れられるマーケティング実践の方法論を紹介していく専門誌です。記事の一部は、「アドタイ」でも紹介していきます。
第3号(2015年5月27日発売)が好評発売中です!詳しくは、本誌をご覧ください。

産地や銘柄ではない、一次産品の新しい評価基準をつくった農家。
OEM生産が中心の経営から転換し、自社ブランドを立ち上げたメーカー。
それぞれのやり方で、新しいブランドをつくり、新しい販路を開拓した企業の事例を紹介します。

3代続く農家の新しい試み

川崎市宮前区にある小泉農園のビニルハウス。高設栽培のいちごがずらり。

再開発が進む二子玉川や多摩プラーザといった、近年注目を集める街にほど近い、神奈川県川崎市宮前区。小泉農園は、この地で200年間・3代にわたって続く、都市型の野菜農家だ。トマトやレタス、カブ、コマツナとさまざまな野菜を露地栽培でつくり、川崎北部市場、生活クラブ生協(神奈川)のほか、地元の小売店や飲食店に供給してきた。

そんな小泉農園の3代目・博司さんは、東京農業大学を卒業後、飲料メーカーの営業部員として2年間勤めたのち、2002年、26歳のときに就農。同農園で初めていちごの施設栽培をスタートした。これが現在、「わがままいちご」の名前でメディアにたびたび取り上げられる、同農園の“ブランドいちご”栽培の始まりだった。「祖父や父と同じ場所で同じことをやっても面白くない。今までとは違うもの、それも値段が高くて嫌いな人がいない野菜がないかと探して、思い至ったのがいちごでした。いまではすっかり主流になった高設栽培技術が出てきたタイミングで、従来の手法よりも栽培がしやすい環境も整い始めていたので、試してみようと思ったのです」。

試験栽培で収穫したいちごを、妻の元職場である千疋屋の上司や同僚に食べてもらったところ、おいしいと評判に。これはいけると確信し、2003年から直売を開始した。今年で12年目。生産規模を徐々に拡大し、現在、同農園では露地栽培の野菜と施設栽培のいちごを、およそ半々の割合で生産している。

「わがままいちご」は、いちごの品種名ではない。品種で言えば「とちおとめ」「章姫」が獲れる小泉農園のいちごを「わがままいちご」と総称し、販売しているのだ。「暑い/寒い」「水が飲みたい」「病気になった」「草をむしれ」……こうした“わがまま”を15カ月間、毎日一つひとつ聞き続け、ようやく赤く甘く実るいちご。低農薬栽培を心がけ、最先端の農業技術を用いながら手間をかけて育てていることから、こう名付けた。

「いちごの産地といえば、静岡や栃木をイメージする人が多いはず。川崎でいちごと言われても何だかピンと来ないだろうし、どうしたら多くの人に知ってもらえるか、『欲しい』と思ってもらえるかと思案していました。そんな中、知り合いのデザイナーが『ブランド名を付ければいいんじゃない?』とアイデアをくれたのです」。

「わがままいちご」の名を掲げたところ、地元の子どもたちが興味を示してくれたほか、わがままいちごを求めて、県内外から多くの人が農園に来てくれるようになった。そのため、直売に加えていちご狩りもスタート。土日は家族連れ、平日はママ友同士の来園が多いと言い、取材当日は午前中のみの営業で60~70人が来場していた。さらに、現在はインターネットでの直販も行っている。

次ページ 「ギフト需要を開拓」へ続く


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