「箭内道彦×並河進「『社会のために」は、ブームじゃないぜ!社会×仕事×自分の関係の結びかた』(後編)」はこちら
IoT社会が夢物語ではなくなり、広告業界においても身近なテーマになってきた。東京大学の坂村健教授は、約30年前から「どこでもコンピューター」としてIoTの未来を予見し、オープンなコンピューターアーキテクチャー「TRON(トロン)」を構築したことで知られている。その功績により、今年、世界最古の国際機関ITU(国際電気通信連合)から「150周年記念賞」を受賞した。電通CDCの佐々木康晴氏は坂村研究室から電通に入社した唯一の弟子。入社20年を迎えた今、坂村教授が目指した社会が実現に近づき、電通での仕事と自分のルーツが結びついてきている。「モノとモノがつながり合う世界」をそれぞれの立場から2人が語ったトークショーの前編をお届けする。
「IoT買ってこい」ではうまくいかない
佐々木:
今日のタイトルは「IoTが創造するNew WORLD」ですが、僕としては「NEW電通」だと思っています。IoTがどう広告会社と関係あるのか、先生の話を聞いて、「IoTって自分の仕事と関係あるんだな、やらなきゃ」と思ってもらえたらなと思っています。
坂村:
「IoT」という言葉がバズワードになっていますけれども、この言葉はマーケティング用語です。以前は「パーベイシブコンピューティング」や「ユキビタス」と言う呼び方が多かったのですが、みんな同じ意味です。最近は分かりやすさのためかIoTと呼ばれることが増えています。「IoT」という言葉はMITにいたマーケティング系の人が言い出した言葉で、要はマーケティングのために、「ユビキタスコンピューティング」とコンセプトは同じでも違う言葉で言っているだけですね。物がインターネットにつながると、例えば会場の入場者数や室内の温度など、さまざまな“状況”を人が仲介することなく自動的に把握できるようになります。生産機械のオートメーション化を超えてIoTは社会全体の最適制御──つまりは省力化や省エネ化、人件費などのコスト削減につながる技術だというわけです。
