【前編】「IoTが創造する、NEW WORLD 坂村健×佐々木康晴【前編】」はこちら
IoT社会が夢物語ではなくなり、広告業界においても身近なテーマになってきた。東京大学の坂村健教授は、約30年前から「どこでもコンピューター」としてIoTの未来を予見し、オープンなコンピューターアーキテクチャー「TRON(トロン)」を構築したことで知られている。その功績により、今年、世界最古の国際機関ITU(国際電気通信連合)から「150周年記念賞」を受賞した。電通CDCの佐々木康晴氏は坂村研究室から電通に入社した唯一の弟子。入社20年を迎えた今、坂村教授が目指した社会が実現に近づき、電通での仕事と自分のルーツが結びついてきている。「モノとモノがつながり合う世界」をそれぞれの立場から2人が語ったトークショーの後編をお届けする。
IoT時代に広告会社の役割はどう変わるのか?
佐々木:電通
も今は、サービスやデバイスの開発を行ったり、色んな業界をつなぐ役割を担うなど、広告会社にとどまらなくなってきています。さらに今後IoTで広告会社の役割はどう変わるのでしょうか。今はメディアを「押さえる」という発想ですが、ハイアールの冷蔵庫にディスプレーがつくなど、さまざまな物体がネットにつながってニュースやコンテンツが見られる、というような変化が急激に起きています。IoTで色んなものがメディア化すると、誰がそれを仕切るのか。広告会社のような仲介業はなくなるのでしょうか?
坂村:
情報伝達媒体が爆発的に増えれば、「押さえる」という発想は通用しなくなります。ただ、電通は、どこにどう出すかのプロデュースなど、メディアを押さえる以外にも多くのことをしているでしょう? その内容を細分化して見ていくと、これから残る部分が見えてくるはずです。どこに重きを置くかを変える必要はあるでしょうね。多メディア時代には、今よりもっとプロデュースの能力が求められるはずです。
佐々木:
増えすぎた情報や機能を整理して、うまくつないであげる役割ということですね。では、IoTでマーケティングはどう変わるのでしょうか。例えば、アメリカのディズニーワールドではバンド型のチケットを配っていて、それで買い物もでき、ホテルのキーにもなり、アトラクションの予約もできる。記念写真もバンドに届く。もの自体に色々な情報がたまっていく時代になります。顧客データを押さえた者がマーケティングに勝つといわれる中で、それぞれのプレーヤーがデータを持っていくと、広告会社の役割はどうなるのかという疑問が浮かびます。

