データを「集めて」「グラフにする」ことはできるけれど、そこからどうしたらよいですか?

蛭川速

データ分析をストーリーで学ぶ書籍『社内外に眠るデータをどう生かすか ~データに意味を見出す着眼点~』が発売になりました。今回は、発売を記念して、本書のストーリーを少しだけアドタイで公開していきたいと思います。日々、データに向き合い、企画やプレゼンを行っている方は、主人公の遼平に共感しながらお楽しみください。

営業からはじめてのマーケティングへ

老舗の洋菓子メーカー「みなとや」のスーパー営業パーソンとして鳴らした仁科遼平は、緊張の面持ちで通勤中の電車内でつり革を掴んでいた。なぜ自分がマーケティング課へ異動なのだろうか。しかも、課長として異動。これまでの営業実績が評価されての栄転に嬉しい気持ちは確かにあるが、内示を受けたマーケティング課長のポジションにはやはり驚きを隠せなかった。

これまでの社会人人生を振り返っても、経験と勘に基づいた行動しかとっていない。マーケティングは論理的に物事を整理して合理的に意思決定するというイメージで、自分のこれまでのビジネススタイルとは正反対に属する仕事の進め方になる。しかもマーケティングのマの字も知らないズブの素人だ。

疑問の残る配置転換に対する不安はあるものの、チャレンジ精神の旺盛な遼平は意気揚々としていた。「何だか分からないものに立ち向かう時の高揚感というか、アドベンチャー的な取り組みはワクワクする」。遼平のそんな意識を見越しての異動だったのかもしれないとひとり考えているところで、電車は、みなとや本社のある茅場町駅に到着した。

みなとやは戦後、物資が不足している中で、黒糖を使ったキャラメル菓子に着目し一世を風靡した洋菓子店を発祥とする。創業者である南戸介司が一代で創り上げた中堅企業だ。介司のトップダウンの経営スタイルが組織と人に浸透している。

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