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コラム

パーソナライゼーション時代-メディア企業のマーケティング戦略

転換期を迎える、日本のメディアビジネスを考察する — ➁紙媒体・ラジオ

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【前回】「転換期を迎える、日本のメディアビジネスを考察する — ①テレビ篇」はこちら

©123RF

前回のコラムではパーソナライゼーション時代のTV局のマーケティングの在り方について、示唆を出させていただいたが、今回は紙媒体とラジオ局に触れていきたい。

パーソナライゼーション時代における紙媒体のマーケティング戦略とは?

新聞や雑誌など、紙媒体は苦戦を強いられており、ここ十数年は、どの会社もその発行部数を減らしている。また、新聞広告費は販売部数とページ数がともに減少したこともあり、毎年減少している(電通「2018年 日本の広告費」より)。

紙という媒体にコンテンツや広告を載せて売るというビジネスモデルは、現状では成長は見込めないダイナソーモデルといわざるを得ない。今後は、基本的には「ペイウォール方式」や「フリーミアム方式」なども含めて、従来の紙媒体を物理的に売るビジネスモデルから、消費者の関心事項にパーソナライズした記事コンテンツを販売する方式へと転換されていくだろう。

しかしダイナソー型になっているのは、そのディストリビューションの方法であり、紙媒体社がもつコンテンツの価値ではない。紙媒体のコンテンツには記者やライターという専門の「情報キュレーター」が存在しており、編集というキュレーションにより情報に付加価値をつけるビジネスモデルである。現在は、消費者が消化しきれないほどの情報量が目の前に存在している時代であり、だからこそ、キュレーション機能は再注目されてしかるべきである。

コンテンツの価値を生かす、新しいディストリビューションの先行事例も生まれている。例えば米国では「Narratively」という一日1ニュースに絞って配信し、そのニュースに関係する「人」を深堀りする編集をしたサービスなどが存在する。

日本でも同様に、媒体ではなくコンテンツ単位で課金をしていくビジネスモデルも支持され始めている。「cakes」や「note」などのサービスを展開するピースオブケイク社は、その一事例といえるだろう。同社のサービスのように、単純にたくさんの雑誌や本が読めるというサブスクリプションモデルではなく、個人の嗜好性に応じてパーソナライズした、個々のコンテンツを届けるモデルはさらに広がっていくだろう。

ただ、その際のパーソナライズの精度が問題で、単純にコンテンツのテキストメタデータを拾ってマイニングするだけでは、本当の消費者インサイトには応えられない。AIによるディープラーニングなどによる深いリコメンデーションが不可欠となる。ここでもエマージング技術をどう取り入れ従来のビジネスモデルだけではなく、同様のビジネスモデルを検討している競合と差別化するのかが重要なポイントである。

次ページ 「紙媒体社としての個別のCDPでパーソナライゼーションの精度を高める」へ続く