メール受信設定のご確認をお願いいたします。

AdverTimes.からのメールを受信できていない場合は、
下記から受信設定の確認方法をご覧いただけます。

×

「商品を魅力的に見せ、売る」企画のポイントとは

share

「第12回販促会議企画コンペティション(販促コンペ)」(主催=宣伝会議)は2019年11月28日、「いま求められる企画とは何か?」をテーマとしたセミナーを開催した。第一部では、電通のプランナーで第11回販促コンペ最終審査員の尾上永晃氏が、商品を魅力的に見せ、売るためのポイントを講義。第二部では、グランプリ受賞企画の課題を提供した牛乳石鹸共進社の上野正雄氏、応募企画を実現した大関の長石元一氏らが登壇し、尾上氏を交え、パネルディスカッションを実施した。

商品の持つ価値から逃げない 価値と欲望を一致させる

2019年、「販促会議企画コンペティション(販促コンペ)」の最終審査員を務めた尾上永晃氏は、電通でプランナーとして活躍。「東急池上線フリー乗車デー」や「日清チキンラーメン アクマのキムラー」シリーズ、「Netflix リラックマとカオルさん」など数々の企画で成果を収めている。

尾上氏自身が企画を立てる際に重視しているのは、「商品の持つ価値から逃げないこと」。そのきっかけとなったのは、入社4年めに担当した清涼飲料水「カルピスオアシス」のキャンペーン「オアシスフォトファクトリー」(2013年)だった。

「ソーシャルメディアで、周りが投稿している楽しそうな写真を見ると気持ちが下がる現象には、誰しも心当たりがあると思います。そこで“非リア充”※1な画像を送信すると、“リア充”な画像に加工されるキャンペーンを企画しました」

“リア充”という言葉の流行もあって、新聞に掲載されるなど大きな話題に。しかし、商品の売り上げにあまり影響を与えられなかった。

「いまお話ししたような気持ちの動きというのは『心の乾き』。しかし、商品本来の価値は、『体の渇き』を潤すというもの。キャンペーンのために、拡張しすぎたことが間違いだったと思います。『体の渇きを潤すこと』から逃げずに、それを伝えないといけませんでした。商品に向き合い、その価値と消費者の欲望を合わせることをきちんとやらないとダメだと反省しました」

その反省を生かしたのが「カップヌードル パスタスタイル」の企画「Pasta? or Not Pasta?」(2015年)だった。「パスタスタイル」は湯切りして食べるパスタ風カップヌードルという商品だ(現在は終売)。

その商品価値は、「本格派ではないがおいしい」とした。企画では、乾燥パスタ発祥の地とされる、イタリアはグラニャーノ地方まで赴き、「パスタスタイル」をパスタとして認めるかどうか、157人に試食してもらった。

結果、約86%が「パスタと認めない」と回答。「イタリア人が認めなかったパスタ。気にせず新発売」としてキャンペーンを展開すると、話題となり、ネットニュースに。POP代わりに特設Webサイトをプリントアウトして貼り出した店舗も現れ、日清食品が想定していた3倍の売れ行きとなったという。

「先ほどお話しした、商品価値と消費者の欲望を合わせること、から考えて、このときの『欲望』は何だったかというと、『ソーシャルメディアで何か発信したい』ということだったと思います。しかし、ふつうそんなに発信するようなネタはない。ちょっとした強迫観念にさらされている中、ちょうどいい発信の種になれたのだと思います。そして、スマートフォンでそれを見た人が、お店で『ああ、これだ』と見つけて、買う、という構造を考えました」

発売時には特設サイトで、イタリアでの調査と同様に、「パスタか?パスタじゃないのか?」と掲げて購入者の意見を募集。「パスタじゃない、けどおいしい」という感想が多く見られたという。

「パスタだしうまい、と言っても面白くない。パスタじゃないしまずい、っていうとすごく嫌な奴に見えるんで言わない。パスタじゃないけどおいしい、がスベらなくて実のあるコメントなんですよね」

こうしたアイデアの発想法について、尾上氏は、「まず、商品を使う人の気持ちになること。それ以上に大事にしているのが、商品の気持ちになること」と話す。担当する商品を何度も食べたり、どんな店のどんな位置で売られているのかを観察し続けたりするという。それによって、商品価値と消費者の欲望が一致するポイントを見つけ出すのだ。

「昔なら『私たちのブランドはこうです』と強く言っていれば、みんな納得したし、反論も来ませんでした。でも今は「自分たちがこう思っているから、これでいいんだ」という頑なな態度は好まれません。消費者と企業それぞれが持つイメージの合致点を見つける作業が、いまの時代のブランディング。それにはとにかくトライアル&エラー、どんどんやって反応を見ることが大切です」

そのトライアル&エラーの一助として、「販促コンペ」は、「応募数が多く、見るだけでもいいヒントになる」と、尾上氏は話す。

「審査会でも、感覚や雰囲気で受賞企画が決まることは絶対になく、とても厳しくジャッジされていました。『この企画は機能しない』『もし、企画どおりに動くと、こういうことが起きうる。結果、この点で破綻する恐れがある。うまくいかない』など、すべてを実務のレベルで評価し、優秀作を選んでいます」

そうした審査で良い評価をされたものは、インサイトとアウトプットが結びついたものが多い。

「商品の本質的な価値を発見して現代の人たちに伝えていき、それが新しい広告になっていることが大事。販促コンペに出てくる企画も、そういったものが多かったと感じました」

※1 現実の生活としての“リアル”が充実していることを指す俗語“リア充”の対義語。
「販促コンペ」に関する問い合わせ
MAIL:osaka@sendenkaigi.co.jp
TEL:03-3475-7667

 
「第11回販促コンペ」Webサイトはこちら