詐欺師の技術ではない、「邪悪の本質」について
マーケティングにおいて、正しいこと、良いこと、優れたことについて言及した記事は多いですが、「悪」について書かれたものは少ないように思います。
たしかに心理学や行動科学の知見をもとに、マーケティングに「悪用」可能なテクニックとして解説したものはあります。しかし、ここで言いたいのは、そのような詐欺師の技術のようなものではありません。今回はマーケティングにおける「正義」に反する「悪」とはどのようなものかを書いてみたいと思います。
具体的には何が言いたいのか。それは、上記のような「詐欺師の技術」と呼ばれるモノは、それ自体は良くも悪くもありません。なぜなら、これは単に「悪い目的」にも使うことができる、というだけだからです。そして、人々は映画や小説で泥棒や詐欺師が出てきて、人を欺いたり騙したりしても、それをフィクションとして楽しむことができるからです。またこうした表現は、ある意味で人間の本質的な意識や行動に基づいているから興味深いのであって、人を騙すことが道徳的に悪いことだと知っているからです。
したがって、ここでは心理学や行動科学を悪用する方法については解説しません。今回、私が問いたいのは、そのような技術的な問題ではなく、かつてスコット・ペック氏が『平気でうそをつく人たちー虚偽と邪悪の心理学』で解説したような、「邪悪の本質」についてです。それはサイコパスのような特定の性格に起因する邪悪さによって語られることも多いですが、それもここでは取り上げません。ここではむしろ普通の人々が、特に集団で起こす可能性がある「悪」の本質について考えたいと思います。
