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コラム

NYから解説!日本企業のグローバルブランディング

安倍首相の「資料トントン揃え」は百害あって一利なし

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【前回コラム】「オバマ前米大統領のスピーチに学ぶ リモート時代のトップメッセージ」はこちら

8月6日に広島市、9日に長崎市で行われた平和式典での、安倍晋三首相のスピーチが酷似していた件が取り沙汰されている。これは安倍首相自身の問題ではないといっても良い。

では、スピーチライターの問題かと言ったら、それも違うだろう。まぁ、近しい内容になってしまうのは止むを得ないとして、それを聞き手が違った印象で受け取れように工夫する、プロとしての技があってしかるべきだったともいえるが。

一番の原因は、安倍首相の一番近くを取り巻く人々といえるのではないだろうか。どんなにプロがアドバイスをしても、最終的にそのアドバイスを受け入れないかもしれない。原稿だって内部で直されてしまうことがあるのだ。もしそうだとしても、安倍首相は言葉に突っ掛かったりせず、自分の言葉であるかのように話すべきだったが……。

平和祈念式典が開かれた長崎市の平和公園。

手元の資料を見せてはならない

と言うことで、そのような内部のことはさておき、筆者が残念極まりないと思っていることがある。これは、企業トップは是非とも反面教師にして欲しいことでもある。

それは、9日の長崎での会見時、記者からの質問終了後に手元の資料を立ててトントンと揃えたこと。あらかじめ用意した答えを読むだけだったことを、総理自身が見せてしまったことだ。

何故か分からないのだが、筆者がコンサルティングを行ってきた企業トップの多くが同じような行動をとる。会見が終わり、挨拶をして席を立つ前のほんの数秒の間に、手元の資料を立ててトントンと揃えるのだ。揃えるのであれば、寝かしたままだって良い。なのに、みんなトントン。何て“百害あって一利なし”な動きだろう。

手元の資料というのは、本来見せてはならない情報なども含まれているはず。それを立てる(向かい側の人々に見えるようにする)ということは、コンフィデンシャル意識の欠如とも言える。もし、手元に持つ資料に重要な内容が書かれていなかったとしても、わざわざ聴衆に見せるものではない。会見をする人が手に持っている資料の内容が見えると、聴衆は裏側が見えてしまったような気持ちになる。しかも今回のように、しっかりカンペが用意されていて、読んでいただけだった証拠が見えてしまえば、首相の信用に傷がつくことにつながる。

またこの行為は、視覚におけるノイズ以外の何ものでもない。ついホッとして、気が緩んでしまうのだろうが、「あー終わった、早くこの場から立ち去りたい」という心理の現れとも言える。無意識なのだろうが聴衆に対して非常に失礼だ。

資料を持って退出するならまだしも、安倍首相はその場に残して退出している。トントンとまとめる意味はないのだ。携帯して退出するにしても、横にしたままでも十分まとめることは可能だが。

次ページ 「完全に退出するまで気を引き締める」へ続く