メガヒット作『鬼滅の刃』からみる「アニメ」と「マンガ」のビジネスの逆転

【前回コラム】「1人あたり消費額は約10倍!人々が熱狂する“推し”とは?」はこちら

“推し”やヒットコンテンツを語るとき、この2019~2020年という時代において『鬼滅の刃』の話題を避けることはできないだろう。

オリコン2020年上半期本ランキングでは1~19位を独占し、すべてが200万部超え。アニメのオープニング楽曲LiSA「紅蓮華」は女性アーティスト歴代累計で初となるデジタルシングル100万DL達成など、あらゆるものが記録づくしのこの作品は、前回同様にGoogleトレンド(図1)でみると、流行の始まりは2019年4月となっている。そこから1年をかけてほかの人気作品を越えていき、20年夏になってはじめて人気のピークをつけた格好。

ピークの度合いはさすがに2014年8月の『妖怪ウォッチ』までには達していないが、同じ14年の『アナと雪の女王』と比類するレベルだ。間違いなく、2019~2020年を通してのNo.1のヒット作品と言えるだろう。同じ『週刊少年ジャンプ』で連載している人気作『ワンピース』を抜いたこともその裏付けとなっている。

(図1)メガヒット作品のGoogleトレンド比較。

『ワンピース』の特殊性は、ほかのヒット作品と違って、ずっと高位安定を築いてきたことにある。1人の作家が描いたコミックスとしては、これまで約100巻で累計4.7億部弱の堂々1位。世界一の記録である。歴代2、3位の『ゴルゴ13』や『ドラゴンボール』から2倍近い差をつけて、世界ギネスにも認定されている。まさにマンガの中のマンガと言える。1997年から20年以上同誌の看板作品であり、最近でも年間で4巻ずつ新刊を出して1000万部超えという国民的(かつ世界的な)マンガを、『鬼滅の刃』は20年ぶりに追い抜いたことになる。

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中山 淳雄(ブシロード/執行役員、早稲田大学/MBA講師、エンタメ社会学者)
中山 淳雄(ブシロード/執行役員、早稲田大学/MBA講師、エンタメ社会学者)

メディアミックスIPプロジェクトの推進、アニメ・ゲーム・スポーツの海外展開を推進している。リクルートスタッフィング、DeNA、デロイトを経て、バンダイナムコスタジオでカナダ、シンガポールに赴任後に現職。東大社会学修士、McGill大経営学修士。著書に『オタク経済圏創世記』(日経BP、2019)、“The Third Wave of Japanese Games(英語)”(PHP、2015)、『ヒットの法則が変わった』(PHP、2013)、『ソーシャルゲームだけがなぜ儲かるのか』(PHP、2012)ほか。

中山 淳雄(ブシロード/執行役員、早稲田大学/MBA講師、エンタメ社会学者)

メディアミックスIPプロジェクトの推進、アニメ・ゲーム・スポーツの海外展開を推進している。リクルートスタッフィング、DeNA、デロイトを経て、バンダイナムコスタジオでカナダ、シンガポールに赴任後に現職。東大社会学修士、McGill大経営学修士。著書に『オタク経済圏創世記』(日経BP、2019)、“The Third Wave of Japanese Games(英語)”(PHP、2015)、『ヒットの法則が変わった』(PHP、2013)、『ソーシャルゲームだけがなぜ儲かるのか』(PHP、2012)ほか。

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