人を活かし組織を変える「インターナル・コミュニケーション経営」

 

柴山 慎一(社会情報大学院大学 教授、日本広報学会 理事長)

昨今のネット社会の進展とソーシャルメディアの浸透に伴って、個人がメディア化している今。会社のブランドイメージを高めるインターナル・コミュニケーションが注目されている。その重要性を指摘する経営者も多く、企業コミュニケーションのあり方も変化しつつある。

会社とは何をするところでしょうか? ヒト、モノ、カネといった経営資源をインプットし、それらに付加価値をつけてアウトプットするところ、と考えるのが一般的でしょう。ここに他社との差別化を取り込み、具体的に表現したものが「ビジネスモデル」です。

また、社会から人材を預かって育成し、その結果として成長した人材を輩出するところ、と考えることもできます。人材が成長していく途上で、様々なアウトプットがなされ、その成果に対して対価を獲得し、結果として売上や利益を生み出します。この考え方を具体的に表現したものを「人材育成モデル」と呼ぶことができるでしょう。

さらには、社会から情報を広聴によってインプットし、その情報に付加価値をつけて広報によってアウトプットするところ、と考えることもできます。ここに他社との差別化を取り込み、具体的に表現したものが「コミュニケーションモデル」です。

この中のひとつのプロセスとして、インプットした情報に社内で加価値をつける活動のことを社内広報活動、いわゆる「インターナル・コミュニケーション」と呼びます。このように考えると、自社ならではの違いを明確にし、強いブランドをつくる上では、どのような対外情報発信をするかよりも、インプットした情報に対して、社内においてどのようにして付加価値向上を図っていくかの方が大切であると気づきます。インターナル・コミュニケーションの成果次第で、会社のブランドイメージを高めることができるわけです。

社員の発信力を有効活用する

多くの会社では、社員一人ひとりが持つ社外との接点を意識し、社員の情報発信力を有効活用するべく、インターナル・コミュニケーションに力を入れ始めています。広報部が唯一の情報発信拠点であった従来型のコミュニケーションモデルはすでに崩壊しています。

また、所有から利用へとビジネスモデルが変化する中、製造業や流通業などの従来型の多くのビジネスモデルがサービス業化してきています。サービスとは、社員である人間が提供するものです。社員の満足なくして顧客の満足は得られません。社員の確かな経験があってこそ、顧客にその経験が伝わるものです。

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